まもなく、路上ライブを撮り始めて一年になる。
写真は、撮り始めて間もない頃に撮ったもの。
この頃の私が撮ろうとしていたのは
路上ライブをやっている街の情景だった。
正直に白状すれば、シンガーは誰でもよかった。
モデル撮影ではないから、被写体が絵になるかどうかは重要でない。
大事なのは、撮りやすいかどうかだった。
対象を一人に絞って顔なじみになれば、いっそう撮りやすい。
選んだのは、とっとだった。
写真のとおり、キーボードで弾き語りをするシンガーソングライターだ。
あちこち路上ライブを見て回ったなかで、異色の存在だった。
キャッチフレーズは「こころがきれいになるうた」だという。
歌う曲は、子どもに受けそうな歌詞とメロディーだが、
道行くビジネスマンが足を止めて聞き入ることも多々ある。
老若男女さまざまな人が、思わず立ち止まった。
あきらかにアイドル路線とは方向性が違う。
そのせいか、聞き入る人の立ち位置が遠巻きになる。
アイドル系の路上ライブだと、ファンはシンガーに群がるので、
街の情景をからめて撮るのは難しかった。
その点、とっとの路上ライブなら撮りやすい。
なるべく客観性を保ちながら
路上ライブを受け入れる街の空気感を表現できるような
そんな写真が撮りたかった。
だが、相次いで事件が起きたせいで、
街の安全は脅かされている。
路上ライブを受け入れる自由な雰囲気も
どんどん失われていった。
なんとも嘆かわしいことだ。
かわったのは街の環境だけでなく、私自身もだった。
だんだんと路上ライブへの視点がかわっていった。
その変遷の記録を、少しずつ書き留めていく。
