かつて「お家芸」と呼ばれ、表彰台の常連国だった日本のシンクロ。
その「お家芸」が、かつてないピンチを迎えている。
事の発端は、井村コーチの中国移籍だった。
北京五輪を前に、中国のシンクロナショナルチームは、
日本の井村コーチをヘッドコーチにむかえ、強化をはかった。
結果、大躍進を遂げ、日本を脅威にさらす。
一方の日本は、何とかメダルを獲得して面目を保ったものの、
かつての面影はなかった。
そして、今回の世界水泳・ローマ大会。
圧倒的王者のロシア・日本人コーチを有するスペイン・急成長した中国に惨敗し、すべての種目でメダルを逃した。
北京五輪を終え、各国がロンドン大会に向けて世代交代に取り組むなか、
日本チームも世代交代の時期を迎えた。
しかし、今回の結果が示しているように、
日本のみが、その波に取り残された格好だ。
シンクロはイメージ競技といわれ、ランキングなどの積み重ねが大きく影響する。
つまり、一度「衰退した」という印象をジャッジに与えると、次回以降、
そのジャッジの印象を翻すことが、究めて難しい。
それだけに、今回、表彰台をすべて逃したことが、後に与える影響は
限りなく大きいといわざるをえない。
井村コーチに頭を下げて戻ってきてもらうのか、
それとも、ロシアなどの強豪国から新コーチを呼び寄せるのか、
もしくは、このまま方向性を見失ってしまうのか――
シンクロ界は、決断の時を迫られている。
(裕)