午前9時24分、肌に張り付くような湿気と暑さに耐えきれず、水色のタオルケットを蹴飛ばした。家にはすでにわたししかいなくて、今日が平日だということを実感する。赤く火照った体から熱を逃がすように体を動かし、洗面所へと向かった。2人分の洗濯物を洗濯機に入れ、スイッチを押す。朝食は適当でいいや、と思い、茶色のお茶碗にご飯を盛り付け、鮭茶漬けの素をふりかけた。冷蔵庫から取り出した緑茶をちょうどいいくらいまで注ぐ。普段食べるスピードが死ぬほど遅いわたしでも、お茶漬けなら10分ほどで食べられる。これでも遅いとは思うが。ちゃちゃっと食べ終え、空になったお茶碗を流しへ持っていった。昨日借りたCOSMOSのCDをiPhoneに取り込むため、歯磨きしながら鈍い銀色のパソコンを立ち上げる。iTunesを開き、CDをパソコンに取り込む。歯磨きと取り込みが同時に終わったので、そのまま曲を流しながら化粧することにした。その前に着替えを、と思い、黒色のスキニーと黒色のキャミソールを身につけたが、暑すぎてTシャツを着る気になれず、とりあえずそのふたつだけで過ごす。COSMOSの「がんばらなくちゃ」を聴きながらファンデーションを塗っていたら、胸元あたりにある赤色のそれがふと視界の端に入った。ああ、そういえばあれから2日経ったのか。改めて考えると少し、というかめちゃくちゃ恥ずかしくなり、なるべくそれを視界に入れないようにしながらテラコッタ色のアイシャドウをのせていった。全ての支度を終え、午前10時48分発の電車に間に合うよう家を出た。最寄駅へ向かう道中、真っ青な西の空に真っ白な入道雲が横いっぱいに、そのせいでもう横にはいけないとでも言うように、縦にもぐんぐん伸びていた。戻ってきた夏は24℃で死ぬ。わたしは36℃で死ぬ。