【ケイコ】
帰国して日常に戻り、友人から「どんなことを思った?」と聞かれたとき、少し考えて「一歩を出せば着くんだと思った」と答えた。
単純なことなのだけれど、「一歩を出すこと」が終わりまで自分を届けてくれる。そして、出さなければ始まらない。
そんなことが実感できた旅だった。
朝起きて、ご飯を食べて歩き出し、カフェで休み、歩き、昼食をとる。エル・カミーノフレンズと話し、笑い、宿に着いたら洗濯をして身体のケアをして眠る。
頭の中は次のことだけを意識して単純になっている。
13日間とは思えない、濃密な時の中で出会った人々や景色が、またこうして書く作業を通して鮮やかになってくる。
また、しばらく経って気づいたことだけれど、完全に退職した後、ケンシも私もどこか違和感があり、ぎこちなく、所在無く、30年近くふたりだけでいたことのない時間が、どこかでのしかかっていた。 それが、たった1ヶ月一日中ほぼ一緒にいたことで、日本に戻り、再び訪れた日常に浸かってみたら、お互いに自然な距離感で暮らしていた。お互いに立ち位置が自然に取れるようになっていた。
バルセロナの電車内にて
この旅ができたことは、まず母が85歳(2016年当時)でも、ひとりで何の支障もなく暮らしていてくれたこと(2019年に大腿骨骨折をしたものの、現在もひとり暮らし継続中)娘の桃子も息子の駿もそれぞれに自立してくれていたこと。
私の英語の授業を代わって行ってくれた加木屋菜美さん(私の自慢の教え子)も、ちょうどICUを卒業し、ドイツの大学院に進もうというタイミングで時間を確保してくれたこと。
私の体のメンテナンスのために、日本から支持を出し続けてくださった西所沢の「さわ治療室」の山崎恵さんがいてくださったこと。
こうした状況があったからこそ、13日間歩き続けることができたのだと感謝しています。
そして、この旅に誘ってくれて、いつも私の後ろから見守ってくれていた夫、ケンシに感謝。
また歩きに行こう。
今度は熊野か、四国か、はたまたエル・カミーノ アゲインか。
バルセロナ最後の日