【ケイコ】

 旅支度の日々

 

 私はエルカミーノ関係の本を見て、何が必要か考えたり、足や身体のケアに必要なものを準備していた。40代の頃からギックリ腰を繰り返してきていたので、体のケアが大切なことは知っている。毎朝ストレッチをしてからウォーキングを続けていることも予防の一環。また、以前からアロマを勉強したり、石鹸のことを学んだりしてきていたので、それ以前と比べたら、すでに生活自体がかなりシンプルになっていた。薬も必要ないし、髪も身体も石鹸ひとつでOK。持ち物はそれほど多くない。

それでも、着るものには悩まされた。ダウンはマストだし、エル・カミーノを歩き終えてから着る、普通の服も少しは持って行きたい。4月のスペインは暖かいのだろうか? 雨や寒さに備えて、帽子や雨具も必要だ。寝袋もなくてはならない。

自然と荷物は増えていって、部屋に山積みになってしまった。でも自分で荷物をかついで歩く旅だ。重くなれば、それだけ一歩を歩くのがつらくなる。「持ち物は最小限」、そう自分に言い聞かせながら、荷物を減らしたり、また増やしたり、ずいぶん苦労してしまった。結局、私の荷物は8キロ、ケンシは10キロほどになった。

 またふたりで買い物に出て、あらたに防寒具やリュック、靴、トレッキング用ストックを買い込んだ。トレッキングシューズは足慣らしをしておかなければならない。私は毎日のウォーキングのときにトレッキングシューズをはいて、やわらかく足に馴染むよう準備をした。そしてストックを持ち、使い方も練習した。エル・カミーノを歩く旅が、少しずつ現実感を持ってくるようだった。

 

 メキシコ以来の、バックパックでの長旅。しかも自分たちの足で歩く旅だ。その実感がないまま、現実的に持参する荷物の準備と、1か月家を空ける用意をしながら、1月から3月を過ごした。

 こうして2016年の春4月、私たちは13日間で311キロを歩くエル・カミーノ、プラス2週間のスペイン旅行に出かけた。