和へ394 「続泥流地帯」を読んで | 宮崎光子のブログ

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和へ394 「続泥流地帯」を読んで

「僕は命にかけて復興する」

そう叫んだ拓一に、

「阿保っ!

「すっこんでろ!

と、たちまち怒号が飛んだ。それを会場の片隅で見ていた耕筰は、意気地なく動悸したものだ。だが拓一は、その怒号に負けずに、会衆を前にして言った。

「そうだ。僕は阿保だ。だが阿保の話も少しは聞いてくれ。・・・・・・僕の家は日進の沢にあった。そして何も彼もが流された。その瞬間まで働きに働いていた祖父も祖母も、かわいい妹もみんな流された」

深い悲しみのこもった声に、会衆が静まった。

「三十年前、一本々々の木を切り倒し、あの土地を肥沃な畠に変えた祖父母たち、それを思えば、僕は復興せずにはいられないんだ」

再び立ち騒ぐ会衆の中で、拓一は叫んだ。

「僕は断じて、あの土地は枯木ではないと信じている!

それらの言葉が、耕筰の胸に彫りつけられたように、今もはっきりと残っている。

(

しかし、よかった。今年も実らなかったら・・・・・・)

そう思うと、たとえつんつんと突っ立ったままの稲が多くても、耕筰はしみじみありがたいと思う。

垂穂がこうして何分の一でもある以上、ここが再び美田に成るのは確実だ。

(しかし、福子はどうするつもりかなあ)

耕筰は思いながら拓一のほうを見る。片足が不自由とはいえ、拓一は耕筰より稲刈りが早い。その拓一の背をみつめながら、耕筰はやはり落ち着かないのだ。福子のことがあるからだ。

(兄ちゃんも、落ちつかないだろうなあ)



福子は深雪楼を出て、拓一と結婚する筈だった。それは昨年のうちに、節子が強く説得したことだった。だが一旦決意したものの、福子はなかなか行動に移すことができなかった。莫大な借金を拓一に背負わすことは、やはり福子としてはつらいことだった。そしてそれ以上に、福子は深城を恐れていた。博徒とつながりのある深城は、以前よりも尚、酷薄な人間になっていた。福子と結婚しようと思っていた金一でさえ、その父を恐れて、福子に近よることができないほどだった。特に、福子を逃すと、深城の前で節子が断言して以来、深城はきびしく監視するようになった。そして福子を身請する客を探しはじめたのだ。幸いにどれもまとまらぬままに今まで来たが、近頃また、福子を身請する話が起きた。福子は、その男に身請されるほうが、拓一のためではないかと思いはじめていた。それを知った節子が、急遽上富良野に帰って来たのである。

「拓一さん、本当に福ちゃんと結婚する気持ちに変わりはない?

節子が真剣に尋ねた。

「むろんだよ。只、福ちゃんが僕のこんな足を・・・・・・」

「足?そんなこと福ちゃんは問題にしてないわ。いいえ、拓一さんの足が不自由になったのは、拓一さんの優しさの現れだって、勲章のように思ってるわ。只、福ちゃんは、うちの父の仕返しや、借金のことで迷っているのよ」

「借金のことは頑張ってみる」

拓一はきっぱりと言った。

「耕筰さんも、私も、そのことは覚悟してるの」

かっきりとした二重瞼の目を、節子は耕筰に向けて、

「仕返しのことは、父のことだからわからないけど、でも、お金のことさえ解決つけば問題ないの。できれば耳を揃えてかえしたいけれど」

この後は話が長くなるので省略すると

沼崎先生にお金をかりようか相談してみる。

沼崎先生は福ちゃんを、しばらく下働きに使っても上げてもいいっていっている。

奥さんが佐野文子さんと同じ矯風会

事は急を要する、福ちゃんがいつ誰の手にわたされるかわからない。

福ちゃんは迷ってる

「それがねえ、ためらっているのよ、あの人。でもこれから帰って、もう一度よっく話して見る。福ちゃんに、今日は体が悪いからって、店を休むように言ってあるの。だけど、福ちゃんは、逃げることは悪いことだと思っているのよ。あんな目に会って来たのに、わたしの父に悪いとか、拓一さんに迷惑かけるとか、このわたしに申し訳ないとか言うのよ。よくよく優しいのね、あの人」

「じゃ、明日の朝、僕も駅に出ようか」

「駄目よ拓一さん。人目につくから。わたしがうまく変装させて連れ出すわ。もし、一番の列車に福ちゃんを乗せることができたら、わたし汽車の窓から白いハンケチをふるわよ。駄目だったら、赤い毛糸の襟巻ね」

この後、白いハンケチをふるのですが、白いハンケチが気になります。

はたして拓一さんは、この場所で農業を続けていけるのか?

また、なぜだか積み木崩しのお母様のことを思い出します。

両親におめかけさんになるように美しく育てられ、おめかけさんだったのを穂積さんとの略奪婚みたいなので、

借金取りに追われ、体を売るようになり由香里さんが生まれ、

由香里さんのイジメや不良のお話は有名でしたが、その後離婚で自殺され、由香里さんも体が弱く亡くなられたと思います。

どうしてもテクノロジーの問題のようなものがないのかなあと思います。

この単行本の49冊改版には表紙の裏に作者の三浦綾子さんの写真が載っています。




なんだか最近この世は夢じゃないかと思ったりします。

追伸

私は、刑事裁判の傍聴などをして、不運な人の事を考えることが多いので、ネガティブになりがちですが、拓一さんと福子さんがうまくいくかもしれません。よくわかりません。

ポジティブシンキングしたいです。