日曜日の曇天の都内のとある公園に突如出現した集団。周りも警察官でいっぱい。おそらく公安と思われる人たちも見張っています。

 

プラカードにはあちこち「神真都Q」と龍をあしらったシンボルマークと「コロナワクチン反対」「子どもにワクチンを打たせるな」とが書かれています。

 

やがて、動き出した集団。近くに来ていた親子は面食らって、お母さん曰く、

「何この団体!同じ方向に行くの嫌だわ」

彼らと同じルートに進むことをためらいます。

 

この騒ぎに乗じたYouTuberと思わしき男女。彼らを背景におどけた動画を一生懸命撮っている(“説教する絵が欲しいね”と漏れ聞こえる)。高級そうなワンちゃんを連れて散歩するセレブっぽい人はしかめっ面をしている。びっくりして見ている外国人の親子。土産話にか、この集団を撮影する外国人の女性。また近くにはおそらく取材であろう人たちも数人たむろしている。ちょっとカオス、でもそれ以上にカオスなのはこの集団でした。

 

この集団の様子は、少し異様。多くの年配の人々を中心とした、少しおしゃれをしてきたのかな、でもちょっと場面違いのような派手な装いの人々と逆に地味な人々の混然一体となった。少し高揚した表情で、すべて、マスクもしていない。マスクをした警察官に先導されながら、ゆっくりと行進を開始。

 

コロナワクチン反対!

子どもたちを守れ!

 

とシュプレヒコールを上げます。この、オミクロン株が流行している間に、とんでもなく非常識な行動をする人たち。でも彼らは何者で、何がしたいんでしょう?

 

神真都(やまと)Qの出自とYouTuberとの関連

この集団については、陰謀論研究家の雨宮純氏のNoteが詳しい。

 

神真都Qとは何か 雨宮純

https://note.com/caffelover/n/n97b5ec8fa92b

1,000人規模のノーマスク集団が渋谷周辺を行進、全国同時神真都Qデモ(2022.1.9)

https://note.com/caffelover/n/n1876fe9fcd20

 

またデモについては、ライターの黒猫ドラネコ氏が取材しています。

 

黒猫ドラネコ【トンデモ観察記】

渋谷1500人デモ行進を追う。反ワクチン・陰謀論集団「神真都Q」とは(前編)

https://kurodoraneko15.theletter.jp/posts/8edb9930-7181-11ec-aba0-23ca0521cc3f

渋谷1500人デモ行進を追う。反ワクチン・陰謀論集団「神真都Q」とは(後編)

https://kurodoraneko15.theletter.jp/posts/f2d41f50-728b-11ec-b59c-abcd898fb944

 

これら情報や彼らの流布している資料を整理して要約すると、

 

主催者(代表):村井 大介(甲?)・倉岡 宏行(岡本一兵衛)

あとほかに甲兄という人がいたり、石橋襄(ジョウスター)という人も代表的な人物として絡んでいる模様。

 

目的:ディ―プステート(というQアノン系の妄想の闇の政府)ほか悪の組織とトランプと呼応して戦う。

新型コロナウイルスは嘘でパンデミックは闇側が起こした虚構。ワクチンは危険、だから子どもたちを守るため立ち上がる。

代表者はワクチンセンターを襲撃することも辞さない

 

ざっくり言うとこんな感じかな、まあ最後は犯罪で、甲兄という人物はそれをやったとやたらと吹聴してましたが、事実は不明(虚言が多いのでどこまで本当か判別がつかない)。

 

これらの裏側については、哲学的まさみんというYouTuberの方かな?が、Twitter上で非常に面白いことを言っていました。

 

https://twitter.com/2masamin2/status/1483144352679751680

以下引用

あまり知られていませんが…

実は、あの「#神真都Q」と名乗る団体は…

 

最初の頃(2〜3年前 2019年の #アメリカ大統領選 頃)はYouTuber仲良し会とその視聴者の平和な集いだったのです!

 

それが米大統領選時に流行ったQanonと、その後流行ったコロナネタがバズる2大鉄板ネタになったのが始まり。

(中略)

動画ネタもこだわりなし。Qネタしかバズらないから引っ張っているだけ。

後半からネタもイベントも視聴者任せ。 

実は

"オフ会もデモ活動も実はファンサービス"

(会いたがる視聴者が多いのです)

(中略)

要するに儲かればなんでも良いし、チヤホヤされるのは嬉しい。

視聴者も寂しがり屋揃いなのかイベントを開くと喜ぶわけで…

 

そもそもの前提として、主催側は実は…

なんと!ビジネスQanonなのです!嬉し泣き

 

主催側がQanonやら諸々を信じていないという悲しい現実。

 

どうも、この石橋襄の元カノなのかな?この方の話を信じるなら、神真都Q全体はともかく、少なくとも石橋襄という人はビジネスQアノンなのかもしれません。

 

要はバズるからやっているし、デモもそのための仕掛けに他ならない(半分そうじゃないかと筆者も思ってはいる)。

LINEのオープンチャットを使ってデモを準備

さて次は彼らの戦略を見ていきましょう。TwitterやYouTubeなどを駆使し、Qアノン的な情報を流布、集めた信者を先導してLINEのオープンチャットに誘い、デモ参加要員を増やしているようです(下記リンクを挙げましたがアクセスは要注意!)。

 

 

ただし!LINEのオープンチャットでそれが許容されているかかなり疑問があります。昨年12月28日オープンチャットについて、「新型コロナウイルス感染症に関する情報について」と題するお知らせを出しています。

 

オープンチャットにおける注意事項

 

オープンチャットでは、真偽不明の情報を拡散する行為を禁止しています。

 

(1) 健康に深刻な被害をもたらす誤情報や社会的混乱が生じる恐れのある投稿やトークルーム

(2) 政府が公式に否定する情報の投稿、およびそのような主張を展開することを目的とする投稿やトークルーム

 

上記につきましては、ガイドライン違反として削除の対象となりますのでご注意ください。

また、具体例とともに安心・安全のためのガイドラインを公開しています。詳しくは以下のリンクをご確認ください。

 

少なくとも、彼らの行なっていること全体はそれに抵触していると思われます。今後、これらガイドラインに違反する旨の通報に関して、LINE側がいかなる対応をするか注目しています。

情報発信のプラットフォーマーの集客者優先の責任の自覚と見直しが必要

さて、ここで考えたいのが、彼ら陰謀論者ではなく、陰謀論者に水を与え、肥料を与え、肥え太らせたプラットフォーマーの責任です。Twitterしかり、YouTubeしかり、LINEしかり。

 

私も情報発信の仕事をしてましたから、情報発信者の責任というのは常に自覚させられていました。それで、書籍全回収なんてのも目にしましたし(役員が辞任させられたり)、自分の先輩の編集長の首が飛んだこともあります。

 

誤情報を流布することがいかに危険か、それが社会にもたらす影響、それに対する真摯な姿勢ってのは、情報発信者に求められることで、何かSNSの普及とコロナ禍でタガが外れたようになってるのは非常に気になります。

 

例えば映像、視聴率のために何やってもよいテレビ局・・・これは明らかにまずいでしょう?一応、彼らは自主的にBPO(放送倫理・番組向上機構)を設立しています。

 

冒頭に登場した男女のYouTuberのあの姿勢もこういったことを単なるバズるネタとしかとらえていない。でもその行きつく先は、上記の視聴率のために何をやってもよいとするテレビ局とどこが違うのかと思います。

 

そして、結局ネタとしてバズったから神真都Qをビジネスとしてやっていると言われる石橋襄と本質的には大差ないのかもしれない。それこそ、YouTuberで自主的に自省するためのルール作りをするべき時期に来ているような気がします。少なくとも誤情報の垂れ流しはみんなで辞めようと呼びかける、あるいは相互で注意し合うことはしないと、それこそ法的に一網打尽みたいにせざるを得なくなる日も来るかもしれない(そして、それをきっかけに言論の自由を委縮させようとする為政者に都合よく利用されることだってありうる、ロシア、中国を見よ)。

 

またプラットフォーマーのインセンティブの計算の仕方も、誤情報を判別して排除する方向にしないとこんな問題がどんどん出てくる。要は非常に悪いインセンティブだということです(正直者より嘘つきにえさを与える)。

 

例えば、今回の神真都Qのデモでクラスターが発生。重症者や死者が出たときにだれが責任を取るのでしょうか?あるいは、本当にワクチンセンターを襲撃する人も出かねない。彼らは「今は戦争だ」と信者を煽り続けているのです。

 

その片棒を持つことは社会的に許容すべきではないでしょうね。表現の自由以前に間違った情報で煽られ、間違った行動をする人たちがいるのですから。

寂しがり屋の神真都Qメンバー

さて。話は戻して神真都Qの個々のメンバーを見てみましょう。彼らからすると闇側と思われるのかな?でも、少し内部に入ってウォッチングさせていただきました。

 

やはり関東と関西は違いますね、特に大阪はすごく活気がある。私もいきなりあいさつされたんでびっくり。とりあえず無難に受けごたえしてあとは静かに(「招かれざる客」シドニー・ポワチエですから)。

 

それに対して関東はクール、まるで透明人間のようにいられるんで、まあ基本は楽。これは結構、現実世界とも相通ずる。

 

で、全体を共通して、その陰謀論とか、そういう表層を剥いでみるとなんとなく見えてきたのが、ある種の人間関係の渇きというか、彼らの感じる不足感。自分たちが社会から大切にされていないという不満。そして寂しさと余裕のなさ。視野の狭さというか単視点。自分の周りしか見えない強い主観と客観的見方への嫌悪とそれゆえの恐れ。はっきりしない強迫観念。陰謀論ではしゃぐ裏の素顔ってそういったものが(言葉には出ないけど)にじみ出るんです。だからこそ、倉岡 宏行や村井、石橋襄の言葉に呼応してしまう。

自分なんか倉岡 宏行の言葉を何度聞いても面白いともすごいとも思ったことはないし、聞いているのは正直苦痛。しゃべる前から元ネタまでわかってしまう陳腐な戯言にしか聞こえない。でも、ある人々の心の琴線には触れるんでしょうね。そこら辺がなぜそうなるかはよくわからない。

 

でも、心の琴線に触れて、それが社会を混乱させたり、家族を分断させたりする、ということに対して、まだまだすべきことはたくさんあるような気がしますが。