良い言葉をかけるときれいな結晶になり悪い言葉をかけると形が悪くなる水の結晶になる」という話を調べてほしいと依頼がありましたので早速、調べましょう。

 

ベストセラーになった

「水は答えを知っている」「水からの伝言」

さて上記の考えは、江本勝が執筆した「水は答えを知っている」「水からの伝言」という本に述べられている考えです。

  

江本氏は、水に美しいクラシックを聴かせて凍らせると美しい結晶に、怒りと反抗の言葉に満ちたヘビーメタルを聴かせると結晶がバラバラになったと主張します。

 

さらに、「ありがとう」や「しようね」という言葉を書いた紙を貼り付けると美しい結晶に、逆に「ばかやろう」や「しなさい」では結晶ができなかったといいます。

 

これらを写真集として、発売したところベストセラーになり海外にも翻訳されたのです。

 

授業の指導案として掲載される

さらにTOSSという教員向けにコンテンツを提供する等の活動を行う教育団体が、この「水からの伝言」授業をサイトの指導案に載せ、科学者などから疑義が唱えられ、削除されるということがありました。つまり学校の現場でも、使われることがあったようです。

波動ビジネスとの関係

では、この「水は答えを知っている」「水からの伝言」の著者である江本勝なる人物は何者かということです。

 

単純に言うと波動ビジネスの会社「株式会社 I.H.M.」の経営者です。2014年にすでに亡くなっていますが、その会社は現在も存在し、波動ビジネスを続けています。

 

会社の江本勝に関する紹介のページでは、

「波動技術のパイオニアで日本に「波動」を広めた第一人者でもある。」

「2011年から3年連続でイギリスで発行されたワトキンスレビューでスピリチュアル(精神世界)の中で最も影響力のある現存の100人の一人に選ばれる。」

 

と書かれているように波動やスピリチュアルがバックグラウンドにある人物です。

 

主張の正当性・妥当性

さらにその実験も、再現性はありませんでした。美しい結晶というのはだいたいマイナス15度程度でできることが研究からわかっています。結晶はマイナス20度にして徐々に温度が上がっていく過程でできるのですが、美しい言葉を話したときには、マイナス15度のものを、それ以外はもう少しすぎたもの(結晶が崩れたもの)を使えば恣意的・操作的にそのようなことはできるのです。もっと言えば無意識でもそのようなことが起こるので、科学の世界ではそのようなことを排除するような手法や手続きを使って実験を行いますが、彼がそれを行ったという形跡はありません。

 

さらに結晶ができるのは、その水ではなくその周りにある水蒸気です。ですので、それら言葉が影響するとしても、そもそも水蒸気とは全く無関係ですので、説明にすらなっていません。

 

その検証に対しても、江本は協力しませんでしたので、彼の主張の正しさに対するエビデンス(根拠)は皆無です。

 

水が人間の言葉に反応して形を変えるというのは、勝手な人間の思い込み以外の何物でもありません。根拠も理屈も破綻しているのです。

 

結論

彼自身これを雑誌AERAで「ポエムだと思う」「科学だと思っていない」と言っています(と言いながら「今後、周りの科学者によって科学的に証明されていくと思う」と述べているが)。

 

基本はスピリチュアル系の波動ビジネスへの宣伝媒体の一つにすぎず、そのためのつかみの話が(たまたまヒットして)肥大化して大きくなったと思われます。現に彼の会社は現在でも「水からの伝言」を会社の看板として最大限利用しています。結局スピリチュアル的な水ビジネスに利用する与太話の一つに過ぎないのです。

 

参考:佐巻健男「水はなんにも知らないよ」ディスカバートゥエンティワン2007

 

 

   「水からの伝言」を信じないでください 

           https://www.gakushuin.ac.jp/~881791/fs/

   菊池誠(大阪大学サイバーメディアセンター) 「「水からの伝言」をめぐって」

     http://www.cp.cmc.osaka-u.ac.jp/~kikuchi/nisekagaku/forum.pdf