先日、心理学の授業で「犯罪心理学」を取り上げました。

 

実はこれ、生徒から以前リクエストがあったテーマです。

でも、なかなか分かりやすい本に出会えず、ずっと保留にしていました。

 

今回、授業準備のために勉強してみて、初めて知ったことがたくさんありました。

 

特に、自分の体験などをとおして考えさせられ、印象に残ったことをシェアしたいと思います。

 

痴漢被害に遭ったので、交番に行ってみた

 

犯罪心理学を学ぶ中で、今から30年くらい前のことを思い出しました。

 

仕事から家に帰る途中、路上で痴漢に遭ったんです。

住宅街の細い道で、夜10時を過ぎており、人通りもありませんでした。

 

後ろからバイクが来る音がしたので、私は邪魔にならないように道の端に避けました。

すると、急にバイクが近づいてきたと思ったら、いきなりお尻を触られて、ブーンと立ち去ったんです。

 

「えっ?まさか、痴漢に遭った?」

 

一瞬、何が起きたか理解できず、きょとん、としてしまいました。

 

自宅の目の前です。

まさかこんな場所で痴漢に遭うなんて、ショックでした。

 

しかし、転んでもタダでは起きれません。笑

慌ててバイクのナンバーや特徴を記憶しました。

 

翌日、早速、駅前の交番へ。

 

 

「昨夜、痴漢被害に遭ったので、被害届を出したいです。

ナンバーや特徴も記憶しているので、犯人を捕まえてください!」

 

意気込んでそういうと、お巡りさんにこう言われました。

 

「本当に被害届を出すの?

やめておいた方がいいよ。」

 

「どうしてですか?」

 

「被害届を出したら、何度も事情聴取を受けることになるよ。

お仕事してるんでしょう?

時間もとられるし、すごく大変だからやめておいた方がいい」

 

お巡りさんは、見るからに優しいおじさん。

善意で言ってくれているのは分かりますが、痴漢行為に対する怒りや理不尽さは収まりません。

 

「・・・じゃあ、警察は何をしてくれるんですか!?」

 

そう尋ねたら、こんなことを言われました。

 

「パトロールをしますよ。

パトロールをすると、その地域での痴漢行為は一時的に無くなります。

 

だけど、別の場所に移動して、同じような行為を繰り返しているようなんだよね」

 

私は何と言っていいのか、わからなくなってしまいました。

結局、被害届は出さずにそのまま家に帰りました。

 

今になってみれば、当時のお巡りさんの言い分は良くわかります。

 

痴漢は、現行犯逮捕なら容易ですが、一度現場を離れてしまえば難しくなります。

目撃情報や確固たる証拠もなく、バイクのナンバーや外見の特徴だけでは逮捕に結びつかなかったでしょう。

 

もし被害届を出せたとしても、徒労に終わるだけで後悔したかもしれません。

 

再犯を防ぐ効果的な対応

 

法務省の犯罪白書によると、性犯罪の再犯率は低いことが分かります。

 

※  赤丸部分に注目。比較のために、日本で再犯率が一番高い窃盗罪も載せています。

 

また、性犯罪以外の窃盗や殺人などを含む刑法犯全体では、検挙された人のうち再犯率が46.2%でした。

再犯を繰り返さないためにも、効果的な対応は絶対に必要ですね。

 

再犯を防止するためには、刑罰だけでなく、更生プログラムと社会復帰サポートの効果が高いことが分かっているそうです。

犯罪のほとんどが衝動的に起こっているため、刑罰を重くしても犯罪を減らす大きな効果は期待できないようです。

 

痴漢常習者の歪んだ認知

 

性犯罪の再犯率は低いとはいえ、常習者がいるのも確かです。

 

刑務所に服役している痴漢常習者の意識調査をしたところ、

 

「痴漢をされて女性がじっとしているのは、嫌がっていないからだと思うか」

 

という質問に対して、

 

「はい」と答えた人が56%もいたそうです。

 

女性の立場からしてみると、びっくりですよね。

 

 

満員電車の中で痴漢に遭っても、じっとしているか、できるだけ早くその場を立ち去る人がほとんどです。

 

「怖い人だったらどうしよう」

「勘違いだったらどうしよう。否定されて恥をかきたくない」

 

そういった不安や恐怖から、言い出せないのです。

 

それを、そんな風に自分に都合よく勘違いしているなんて…

感覚や認識の違いに驚きしかありません。

 

このように女性に対する認知に歪みがある痴漢常習者には、

女性セラピストが女性の立場で話をしたり、共感性を養う訓練などが行われたりしているようです。

 

更生プログラムの効果が出ることを切に願います。

 

犯罪を抑止する社会とのつながり

 

世の中のほとんどの人は、犯罪とは無縁の生活をしています。

 

実際、理不尽な出来事が起きても、感情のまま暴力を振るったりしない人の方が大多数。

だから、犯罪を犯さない人の心理、も研究されています。

 

私たちが犯罪を犯さず、踏みとどまらせているのは一体なんなのでしょうか。

これには、4つの要素があると言われています。

 

① 人や居場所への愛着があること

悪いことへの誘惑があっても

「親やパートナーが悲しむに違いない」

「会社をクビになるかもしれない」

といった不安や恐怖を感じる人がほとんどです。

この、大事なものを失いたくないという気持ちが大事なんですね。

② 将来に向けての自己投資をしていること

キャリアアップのために資格をとったり、目標に向かって努力している人は、自分を貶める犯罪とは真逆の場所にいます。

こういった自分への投資が、犯罪を踏みとどまらせるんですね。

③ 今、打ち込めるものがあること

趣味や仕事などに打ち込んでいる人は、犯罪を犯す暇がありません。

逆に、余暇を建設的に利用できないと犯罪のリスクが高まるそうです。

④ 自分なりの倫理観を持っていること

公共のルールを守ったり、礼儀を大事にしたり。

社会規範を守ることは大事だという価値観を持っている人は、犯罪行為を踏みとどまることができます。

 

 

この4つに共通しているのは、

社会との適切なつながりがある

ということです。

 

社会から孤立せず、

自分がこの社会の一部だと感じられること。

 

この感覚がとても大事なんですね。

 

「特別な誰か」の話にせず、私たちにできること

 

犯罪心理学について勉強してみて

 

人を罰すること以上に、

人や社会とのつながり

 

が大事なのだと、改めて感じました。

 

犯罪心理学と聞くと、

刑事ドラマに出てくるプロファイリングをイメージしたり、

怖そう、とか、自分には関係なさそうだな、

という印象を持つ人も多いと思います。

 

でも、決して「特別な誰か」の話ではありません。

 

私たち一人ひとりの日常や、

どんな社会をつくりたいか、

という問いと地続きです。

 

派手なことはできなくても、

誰かの存在に気づくこと、

声をかけること、

居場所を失わないように見守ること。

 

そんな小さな関わりの積み重ねが、

犯罪を減らす土台になるのかもしれません。

 

最後に、今回、授業準備をするときに参考にした本を紹介しますね。

分かりやすさだけでなく、豊富なデータや解説があり全体像を掴みやすかったです。