返らぬ主人捨てられた。昨日あんなにも愛されたのに。主人が身を粉にして得たお金で換われて機会から人間界に産み落とされた。20本の僕の分身は順番に、見知らぬその主人の体内と空気中に溶けていった。そして、明くる日僕は空っぽになった。主人は最後の一本がなくなるまで大事に僕をポケットにしまっていたのに最後の一本をさも名残惜しそうに味わうと、空っぽの僕を簡単に握りつぶしてこう呟いた。ま、いっか。所詮見知らぬ主人だ。主人はまたここを通るだろうか。僕はまだここで横たわっている。 madoca