初夏の近づく空。
先日はカナダ出身でイギリスで生きたトランペット奏者&作曲家、ケニー・ウィーラーの名曲「ジェントルピース」を即興アトリエのためにアレンジしたものを練習した。
こういう完璧なスコアは、大変な作業だったけれど、アトリエの楽器編成にアレンジし直すだけで本当に勉強になった。シンプルにして素材を最高に引き出すオーケストレーション。
それは素晴らしい料理に似ているのだ。
練習してみて、生徒たちにとっても、各楽器が音楽の中でどういう役割を担っているのか?それを理解するのに最高の題材だったと言える。
この素晴らしいセッションの翌日、初めてアトリエに参加していた女の子の先生からメールがあった。
「昨日、彼女がまだ練習していなかった楽譜をアトリエで初見させられ、屈辱を感じたと父親から連絡があった。この楽譜は、昨日の段階でまだ演奏するか分からないって言ってたから、まだレッスンもしてなかったのよ。これからも彼女はアトリエに参加するべきかしら?」
要するに、予定外の授業が展開されたことが、この先生にも両親にも子供にも、受け入れがたいものだったということだ。これを聞いて、同僚のドラマー、エッジと共にひっくり返ってしまった。
え?屈辱?なんで仲間と共に新しい音楽を発見することが屈辱なのだ?だって彼女はそれを「演奏した」だけじゃないか?!
しばし混乱したあと、即興アトリエ教授陣のグループラインにメールを送る。
「この経験から分かるのはね、音楽院では音楽がどのように教えられているかってことだよね。音楽とは、自分が完璧であることを示す手段であり、準備なしに演奏することは屈辱である、なぜなら、自分が無能であることを露呈してしまうから。
こんな考えで育ってるんなら、即興なんて、それは屈辱どころか、人道罪だわよ!」
そして、エッジがこう答える。
「正しくそうだよ、ミエ!!「即興アトリエ」、これは単なるタイトルじゃなくて、人生における姿勢なんだ!「何ができるか」ではなく、「その瞬間に何をするか」、それこそが生きる力さ。僕にとって、即興を学ぶことは、その瞬間を捉えることを可能にしてくれるんだ。
これは単なる音楽の話ではなく、社会生活そのものだよ。僕の人間関係において、決まった台本なんてない。僕は即興で生きているんだ。そうじゃなきゃ、演説でもしなきゃなんない!」
このメッセージは、一瞬にして私を混乱から救い、感謝溢れる温かい世界へと連れて行った。私は、なんと素晴らしい同僚に恵まれているのだろう。
私は「即興アトリエ」というタイトルに改めて誇りを感じることができる。
私たちは音楽、また人生に対する態度を共有しているのだ。
それで、キース・ジャレットのインタビューを思い出した。
「クラシック音楽のリサイタルやコンサートを行い、レコーディングをしていた頃」とジャレットは回想する。「舞台裏で、コンサートが始まる前に何か重要なものが欠けていることに気づきました。それが何なのかははっきりとは分からなかったのですが、よく考えてみると、これから何が起こるかすべてをすでに知っていたからだと気づいたのです。うまくいくかどうかも、素晴らしいかひどいかなんて、すべて分かっていた。演奏すべき音符はすべて把握していたんだ――まだステージに上がってもいないのにね。だから自分は、何をいつやるか、自由に選びたいんだ。」
これはまた、キース・ジャレットと共に、かの「スタンダードトリオ」をやっていたベーシスト、ゲイリー・ピーコックの言葉である。
「自由に演奏するということは、とてつもない準備が自ずとそこに含まれている。とにかく頑張り続ければ、自分がどう聴こえるか、なんて個人的な事への自己投資に諦めがつく境地にたどり着く。つまり、自分がいかに優れているか、いかに劣っているか、自分らしく何を語る(演奏する)べきか、何を考えて行動すべきか、そんなものを全部放り出して、無心で「聴く」というところに立つわけだ。それこそが自由の始まる瞬間だ。これで広漠たる視界が開ける。なぜならその時、ある意味では決められた道から外れるからね。そうなっても自分が身につけたことをすべて忘れてしまうわけではない。それは間違いなくそこにある。」
音楽に対する準備。それはクラシックであろうとジャズであろうと、無心に「聴く」ところに辿り着くための努力であり、自分の完璧さをアピールし弱みを防衛するために、また決められた道を外れないために練習するのとは正反対だ。
そんなのは人間中心の時代遅れの天動説だ。
来週には音楽院の試験があるのだが、私の生徒たちはどのようなシチュエーションであれ、どのようなレベルであれ、自分が劣っている、優れている、そんなことを放り出してただ音楽に集中することを、今まさに学んでいる。
その姿勢はどのような年齢であれ本当に感動的で、教えていて本当によかったと思う瞬間だ。
これは、代用品を決して受け入れない人生をかけた献身により、その場その場で即興で生み出される音楽です……
これらは、そのメッセージを損なわないよう、ひたすらに心を砕いて演奏するミュージシャンたちによる、素晴らしいラブソングです。
キース・ジャレット

