国内外の証券市場の混乱が一段落したところで、アベノミクスへの待望論が再び盛り上がってきているようだが、ここで敢えて水を差すことを言わせてもらおう。「アベノミクスは近いうちにフェードアウトする。その結果、景気は徐々に減速し、後退に移行する。」これが従来からの私の持論である。
安倍政権は労働賃金の上昇と女性労働力の活用を声高に掲げているが、賃金増加(ベースアップ)に応じることができるのは、資金力がある大企業のみ。日本企業の99%近くを占める中小企業は厳しい受注環境の中、賃金増加など到底できるはずがない。実際にサラリーマン一人当たりの平均年収は年々下がり続け、今や408万円しかない。これは非正規労働者の増加に起因する。仮に名立たる大企業が軒並み今年の賃金増加に応じたとしても、毎年賃金を上げ続けることはできず、単年度限りの「打ち上げ花火」になりかねない。大企業といえども、余裕があるわけではない。グローバル経済の中で、世界の有力企業を敵に回して生き残らねばならず、たゆまぬ研究開発投資、新技術の確立、生産効率の向上、コスト競争力、マーケティング力の確保が不可欠である。つまり従業員に金を使っている場合ではないのである。「グローバル企業との厳しい生存競争の中、従業員に金をかけられない。できれば、安くて優秀な労働力を確保したい」というのが、企業経営者の本音である。安価で優秀かつ日本文化に親和性のある人材を確保しようとすれば、当然アジアの新興国に目が向く。アジアの新興国で賃金が安く、優秀な人材を多く確保できるのであれば、アホで賃金が高く、労働生産性が低い日本の学生を採用する理由がない。実際に、多くの企業でこのような現象が発生し始めている。そんな中、安倍首相は「賃金増加」、「女性労働力の確保」を強力に主張している。目先のことしか考えていないと言わざるを得ない。お金を使う人の数が減っているのに、賃上げを主張してどうしたいというのか?(生産年齢)人口減少率を上回る賃金上昇率を実現できるとでも言いたいのだろうか?当然そんな芸当ができるはずはない。ではなぜ人口減少国に転じた今、人口増加策をマニフェストの柱に据えないのか?それは外国人が日本国籍を取得した際に発生する、参政権の問題があるからだ。仮に現在不仲である中国や韓国の移民が増加し、選挙で中韓系の議員が増加すれば、中国や韓国寄りの政治、経済政策を受け入れざるを得なくなる。この事態を恐れているのだろう。そうであるとすれば、国ごとに移民枠を設定すればよいだけの話だが、大きな国際問題に発展する可能性を覚悟しなくてはならない。 いずれにせよ、安倍政権は日本経済が直面している問題に対してその場しのぎの対応しかしていない。
しかも微妙な発言でデフレ脱却が近いようなコメントをしている。全くの嘘である。確かに昨年来、インフレ率は上昇しているが、これは昨年の円安外貨高による輸入物価の上昇や原材料高、資源高によるコスト面の増加で説明できる。つまり現在発生しているインフレの大半はコストプッシュインフレであると言ってよいだろう。いわゆる「悪いインフレ」が発生しているわけである。悪いインフレにより上昇した物価は最終的に需要と一致するところまで下落する。この不都合な真実を大手企業のベースアップというオブラートに包むとともに、実感なき景気回復をメディア戦略でカバーし、虚偽の景況感を醸成しようとしているのだ。そして景気が減速し、後退に向かうと、「景気循環」のせいにして逃げ切るというのが基本的なシナリオなのだろう。本当に景気が回復するためには企業業績の改善が従業員の給与増加につながることが重要だが、前述の通り、主に大企業はR&Dやマーケティングに多額の資金を投じているため、従業員の賃金増加など、二の次、三の次である。日本企業が高度にグローバル化したために、業績が良くても労働者の賃金を上げることができない。これに加えて、製造業の労働生産性が非常に高く、高度な技術力があるために、安くて品質の良い製品を大量に生産することができる。これらの現象が絡み合ったものがデフレの正体であり、今更修正することはできない。個人消費を引き上げることができない現状で、経済成長率をアップさせるためにはどうすればよいのか?私は人口増加による基礎消費の底上げが最善の策であると思う。日本のGDPの70%は個人消費が支えているからだ。しかし今の政治家達にはその政策を実行する胆力がない。反論は多々あると思うが、もう一度胸に手を当てて考えてほしい。「自分の周りに景気回復を実感している人が何人いるだろうか?これが本当の景気回復なのだろうか?」と。
しかし不動産投資を行っている方には景気減速、景気後退は朗報である。質の高い物件を安く購入できるチャンスだからだ。現在収益物件の購入を検討している方は、自己資金をしっかり蓄え、来るべき時に備えておくことが最善の策であると思う。くれぐれも買い急いで割高な物件を購入しないよう、注意していただきたい。
<ご参考~労働者平均賃金~>
http://www.nta.go.jp/kohyo/press/press/2013/minkan/index.htm
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