読んだことある人もいると思うが、この小説は、僕が初めて自分で本というものをTSUTAYAブックスで購入し、かつ涙し、かつ心にその情景を突き刺さすという出会いを与えてくれた大切な物語である。

『いちご』と言うからに、それは15歳の男女が巡る小さな小さな恋愛話(最終的には壮大なクライマックスが待ち受けるが)

僕はこの本を、ちょうど主人公と同じく15歳の時に読んでいた。だから余分に、感極まるというか、感情移入というか、そういう出来事が起きたのであろうとは思う。

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19年前
僕はまだ西東京とは呼ばれていない、保谷市ひばりヶ丘という地域に住んでいた。
当時まだ幼い思考の中では、『西武池袋線の急行が止まるこの駅は凄いんだ』とよく1人思っていた。池袋や新宿など、都心部と呼ばれるような場所へは1人で出歩くような事のない時代である。寧ろ、西武線しか知らなかったかも知れない。

今の若い子達は凄いと思う、
小・中学生にして渋谷、原宿などに買い物に出歩き、店に入り、携帯で検索しては流行りのテナントやカフェを見つける。

カフェ?
カフェなど

高3に友達と恐る恐る入ったのがドトールコーヒーだった。
それだけ安心な時代になったのかと思いつつも、『流行りの場所では無く、まず地元でどこまで遊び尽くせるか』を念頭に日々過ごして貰えたらと思う。という事自体もはや時代遅れか。

少し戻って

僕はその保谷市にある青嵐中学校と呼ばれる場所へ通っていた。六角形からなる校舎に青い嵐という呼び名で、中々にかっこいい風貌、と同時に、其れ相応の荒くれ者達が在籍する学校でもあった。

ある日の授業中、カズタカと呼ばれる1人の先輩が、校庭で同学年の友達と足の速さを競い走り回っていた。もちろんその時間に体育などはなく、グラウンドにはそのカズタカさんと、もう1人の2人だけである。

「俺の方がはええって!」
「いや、俺だろ!」

なんて言っては、校舎中に響き渡る声量でゲラゲラと笑いながらグラウンドを駆け巡っていた。

とは言ったものの、これはパフォーマンスの一環なのである。

つまりは当時、(僕の中学校だけかも知れないが)目立つ者はモテたのである。

足が速い(運動神経が良い)、カッコいい、粋がる

これがモテる為の三大要素であった。

各クラス中の女子や男子が、一斉にその余興が繰り広げられるグラウンドへと目を下ろす。と同時に、体育会系の教師が怒声を上げながら2人を追いかけ回す。

それをキャーキャーと見つめる女子達

その時思った。

『これで頭が良ければ、本当にかっこいいな』と。

それからだ、僕が勉強に勤しむようになったのは。(頑張ろうと思ったきっかけw)

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ある日の中休み、僕は2〜3回目になるであろういちご同盟の読み返しを行なっていた。

何度読んでも涙腺を崩されるクライマックス、同年代の深層心理を否応なしに突き付けられるその描写に、何の音も受け付けずかぶりつく様に読んでいた。

その時、1人の同級生から声を掛けられた。

立ち上がる僕。

「中島が呼んでいる」

そう言われた僕は、廊下に待つ中島の元へと向かった(中島はバレー部で僕は野球部、バレー部と野球部は相当仲が良かった。)

どうした?と、1人立つ中島に声を掛ける




その時



バキッ!!!


突然僕は顔面を殴られた

膝から崩れ落ちる僕
同時に、足で何度も蹴り飛ばされた

完全に昏倒している僕
そこへ、呼びに来た同級生や同じクラスの男女が止めに入る

「やめて!!」
「やめろ中島!!」

意識朦朧の中、止めに来る男女の言葉が脳内を巡る

そして


「お前三井(仮名)をフッたろ!三井に謝れ!!」

という言葉も覚えている。

つづく



おちまい