ボクはイヌ。
朝から「今日は、お散歩に行けるのかな?」
「いつになったら行けるのかな?」とそわそわ。
さて、お散歩に行くとなると、カラーやハーネス、リードを着ける。
それが大好きなコもいるけど、ボクはカラー、
ハーネス、リードを身につけるのが大の苦手。
でも、絶対に着ける。ニンゲンの法律で決まっているらしいから。
お出かけの時は、抜け毛をまき散らさないようにってお洋服を着たり、
雨の日にはレインコートを着たりもするけど、本当は苦手。
でも、嫌だなんて言わないよ。
ヒトと一緒にお散歩に行きたいし、一緒にどこへでもお出かけがしたいから。
そして、ヒトと一緒に外へ出たら、どんなに嬉しいからと言っても、
好き勝手に駆け出してはいけない。
走り回ってもいけない。
転げ回ってもいけない。
大好きな近所のイヌを見かけても、
いきなり飛びかかってプロレスゴッコを始めてはいけない。
いつも撫でてくれる大好きなヒトを見つけても、
駆け寄って飛びついてはいけない。
だからといって、ちゃんとじっとオスワリしてたって、
大嫌いな音がするバイクとか、傘をさしてるニンゲンとか、
威張ってていつも嫌な目つきで見てくる近所のイヌに、
「こっちに来るなよ!!」って吠えてもいけない。
いつもの公園まで、リードで結ばれている二足歩行の足の遅いニンゲンを、
早く連れて行ってあげようとして、
ボクがグイグイと引っ張ってもいけない。
風のように駆ける事が出来る素晴らしい4本の足を持っていても、
その実力を発揮しないで、のろのろ歩きのニンゲンの横に、
ぴったりとくっついて歩かないといけない。
ぬかるみの泥の上にゴロンゴロンと転げ回って、泥だらけになったり、
土の香りのミミズの上に寝そべって自分の体に匂いをつけたり、
他のイヌや近所のネコたちからの、大切なオシッコの手紙を読んだり、
水たまりにざぶんと飛び込んだり、
道ばたの草をサラダバー代わりにむしゃむしゃと食べたり、
ボクはそんな風にお散歩がしたい。
でも、それはニンゲンが嫌がるから、いつも我慢、我慢。
お散歩から帰ると、玄関で足を拭かれ、
せっかく、ひかえめに大好きな土や草にこすりつけて、
外の匂いをたくさんつけた体をごしごしと拭かれ、
その上、ブラッシングまでされても、じっと伏せていなくてはいけない。
間違っても、「やめてよ!!」なんて言ってはいけない。
そして、朝ご飯。大好きなんだけど、とっても楽しみなんだけど、
いつも同じ硬くてカリカリした丸い粒。
たま~~にもらえるお肉やお魚っていうとっても美味しいやつは、
どんなタイミングでもらえるのか、ボクには分からない。
いつもドキドキして期待するんだけど、
その時は忘れた頃にしかやってこないよ。
ご飯は一瞬で食べ終わる。
でも、その後に藥を飲んで、目薬を差して、歯みがきをするんだ。
藥はニンゲンがへたくそだと、オエッとなったり、
舌の真ん中に置かれて苦かったりするんだけど、
嫌だと言ったら絶対にいけない。
目薬もさっとやってくれたらいいのに
「マテ!マテ!!動かないで! 動いちゃいけない!!」とかって、
なかなかうまくいかない。
もちろんそんな時には、ますます絶対に動いてはいけない。
そして、昼間の退屈な時間。
気になる音がしても、窓の前を大嫌いなヤツが通っても、
ボクは絶対に吠えてはいけない。
退屈だからって、家の中の家具の足とか、
スリッパとか靴とか、噛んではいけない。
もちろん、絨毯を掘って穴を開けたり、
クッションを齧って綿を引っ張りだしたり、
どんなに楽しくてもやってはいけない。
そして、トイレは四角いコーナーのシートの上にしなくちゃいけない。
はみ出たり、はずしたりするのも、絶対いけない。
間に合わなかったら、きっとすごく怒られる。
そろそろ陽が暮れる。
夕方のお散歩はまだかな?
そして夕ご飯には、あの美味しいモノは今日も出てこないのかな?
ボクはイヌ。
ニンゲンと暮す事は大変なんだ。
Casa di Spink☆スピンクの家☆
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