別居前 まだ団地に居た時に

 

ずっと行方不明だった夫が 夕方に帰って来たことがあった

 

なにか食べるものはないのか 

 

それはこっちのセリフだよ

 

あり合わせのものと

作ったばかりの味噌汁をだしたら

がっついて食べ始めたが 

イライラした様子で味噌汁のお椀を持って立ち上がり

鬼の形相で 水道の水を入れた

 

なんだこいつ

 

食べるというより 大急ぎで

胃に流し込んでいる ぶち込んでいる

猫舌め

しねばいいのに

 

一言も言わず すぐさま出ていこうとするので

離婚届の用紙を出して

ペンを渡し はいサインしてね

 

ここで逃げられたらおしまいだ

 

いますぐ出すんじゃないから

さっきも金貸しが取り立てに来たよ

また来るって言ってたよ

 

夫はそそくさとサインして

大急ぎで出て行った

 

前にヤミ金に追われて逃げ回っていたときに

もう自殺するから と言ったことがあった

まだ生命保険に入っていたときだ

それで借金を返すとほざく

なんて自分勝手なんだろう

 

それなら大きい保証のやつに入り直してよ

1年くらい 掛け金を払ってから

思いっきり車のスピードを上げて

あそこの崖のカーブから海に突っ込んでね

 

他人を巻き込んじゃ駄目よ

あくまでも自殺じゃなく事故にみえるようにね

 

じさつだと半分しか保険金おりないからね

 

 

もちろん本気で言ったんじゃないが

案の定 夫はびびってしぬなんて言わなくなった

まだ やり直すからちゃんと働くからと言っていたのだ

 

 

1円も食費もいれず 

私が食べているのかも まったく関心なく

自分だけ ご飯を食べた夫が(げに 食い物の恨みはおそろしい)

駐車場に急いで向かうのが 団地の窓から見えた

またパチンコに行くのだろう

 

 

もしも今夜 警察から電話があって

 

あなたのご主人が事故で亡くなりました

と言われたとしても

 

あーそーですか としか思わないだろう

 

遠ざかるテールランプを見ながら

 

もう なんの感情も湧かなかった