Quality of life of doctor | The Days of Spine Surgeon

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外科医の初心を忘れないように、書いていこう、、
ドラゴンズを応援していてはいるが、、親会社は嫌い

 大学の医局には19年間在局した。いまの自分があるのも大学病院や先輩からの教えであり、医者を育てる教育機関として大学病院は必要である。しかし大学病院での勤務はかなり悲惨なものであった。

 大学の脊椎班で指導医をしながらとある週は以下のごとくであった。朝から脊椎腫瘍の摘出手術が開始された。朝9時に手術室に入室、延々と手術時間がかかり、翌朝の3時よくやく手術患者は集中治療室へ退室した。そして術後の指示を出し1時間あまりの仮眠を取ると、朝礼で術後報告。そのまま次の定時の手術に突入した。その手術をさらに4時間行った。そしてそのまま病棟へ、医局にもどると山のような書類と学生や研修医のレポート、なかには医者の仕事とも思われない残務処理をしているともう真夜中である。一緒に働いてくれる後輩に問うた。「俺たちいつから病院にいるんだっけ?」後輩「忘れちゃいましたよ、そんな大昔のことは。もう次の入室まで時間ないですよ」こうして日々が過ぎていった。土日も当直や学会、オンコール、緊急手術に呼ばれ休みらしい休みもないまま過ぎていく。これだけ拘束されても大学からの給与は手取り30万にも届かなかった。

 世間からは医師、外科医なのだからそんなのは当たり前だよ、こういう仕事だってわかっていて選んだ仕事だろ?と言われるかもしれない。大先輩方には「俺たちはもっと忙しかった、お前らは甘いよ」などと真偽のほどはわからないが、そううそぶかれる。外科医の勤務として普通だと。だがこれが医者の正しい姿、正当な評価であろうか?

 医師不足が叫ばれている。地方に医師がいない、とりわけ外科系、産科、小児科の医師不足が深刻だと。しかし年間6000人の新人医師が出現しているはずなのである。いったい若い医師はどこへ行ってしまうのであろうか?世間ではこう言われている。若い医師は忍耐力がない、きつい科を避ける傾向がある。眼科、皮膚科など緊急呼び出しの少ない科に若い医師が集まることが証拠だ、などなど。確かにそういった側面もあるのだろう。だがBlack JackやDr.コトーに憧れ、やりがいのある科を目指すやる気のある若い医師が多くいるのも事実だ。じゃあそういうやる気のある医師はどこへいったのだろう?

 やる気のある後輩たちに聞いてみた。「そうですね、手術は覚えたいし、最先端の技術は会得したいですよ、ただもうあまりにも低賃金で長時間勤務の職場では生活が成り立たないですね、でもかと言って技術も得れて、余暇もあって、給与もいい、そんな理想の職場なんてないですよね」そうなのである、医師も霞を食べて生きているわけではない。時間にも限りがあり、結婚もしていて家庭があるのだ。若い医師が望んでいるものは、正当な給料、正当な余暇、自分を高めてくれる指導医なのである。 

 まったく当たり前の要求だ。その正当な要求をかなえられる職場が日本にどれだけあるのだろうか?実際問題として、医師不足を悩む大学、病院の経営者は、若手医師が望むものを用意できているのであろうか?雑居部屋のような医局に安い事務机一つあてがい(大学では机さえあたえられなことも多い)、安い給料で当直明けにも連続勤務を強い、「俺たちもそうだった」と当然のように雑用を強制し、先輩医師はさっさと帰宅して、若手医師のやる気を削いでいってはいないだろうか?医師不足の決定的原因は、現場を知らない経営者が放置しているあまりにも悲惨なquality of life of doctorなのだ。

 昨年から私は責任者のひとりとして病院経営に参加させて頂いている。いままでメス一本で臨床畑を生きてきた私は率直に現在の医療の現場からの問題を言わせて頂いた。そして前述した問題をふまえquality of life of doctorの向上を目指した病院作りの必要性を話した。つまり医師に十分な給与、余暇、研修機会、個室を与えることが必要であると。理由として十分な給与は生活を安定させ、十分な余暇は疲れた体や気持ちをrefreshさせる。研修機会や学会により最先端に触れることができる。医師に個室を与えることによって、勤務時間内にも心のon-offをつけることができる。このことが病院にやる気のある優秀な医師を集めることができ、医師の医療へのモチベーションをあげ、事故防止し、技術の向上に繋がり、患者に安全な医療を提供できるというものだ。

 医師不足と言われるが、実際にこのコンセプトを提案したところ我々の病院の話を聞きたいという若手医師の問い合わせは多く、プロジェクトに参加を希望する医師が集まって来た。医師のquality of lifeを考えて、世間のneedsに見合う病院を作るというコンセプト、まだ試みの段階で試行錯誤の状態であるが、若いやる気のある外科医の受け皿はなんとしても必要であり、そこから優秀な外科医を輩出する、私はそれこそが社会貢献になると信じている。もちろん人件費が増える、そのなかで病院経営としても成り立たないといけないというのは確かに難しい問題ではある。しかし外科医の受け皿となる病院を作ることは絶対に必要でありかつやりがいのあるプロジェクトなのだと信じている。

 現状の押し付けられた医療制度のなかでは、外科医は過酷の勤務状況のなか疲弊し、生活が成り立たず滅んでいくことは明らかだ。私はこうした機会を与えられたいまこそ、Saving the young surgeonsをquality of life of doctorを高めることによって進めていきたいと考えている。