江戸前寿司って結局どんな寿司?

そう聞かれて、意外にもちゃんと説明できない自分がいた。

そこでいつものように調べて、起源を辿ってみた。

結果、自分なりに「鮨とは何か?」が定義づけする事が出来た。

まだ独立さえしていない自分が、結果も残さずに語るにはテーマがあまりにも本質的過ぎるが、僭越承知で思うまま書いてみたい。

悪しからず読んでいただきければ幸いです。

さて、先ず訊きたい。

寿司屋で海老といえば何を思い浮かべるだろうか?

最近はマニアックな種類や、希少性の高い種類があり、様々な海老を思い浮かべる事ができると思う。

しかしもし王道の「江戸前鮨」と言うことに拘るなら、車エビ以外は鮨とは呼べない。

それ以外の、例えば甘エビやボタンエビと言ったネタでさえ邪道と呼ばざるを得ない。

理由は単純だ。

当時、江戸前というだけあって東京湾で獲れたネタしか扱えなかった。

あの時代のお江戸のチョイスは2つだけ、車エビと芝エビだ。

しかも保存性を高めるため、火入れがしてある。

冷蔵庫がなく、輸送システムがない江戸時代はこれ以外の選択肢がなかった。

だから江戸前鮨と言えば「ボイルの車エビ」となる。

そこで改めて僕は思う。

「冷蔵庫がなく、輸送システムがなかった」

結局いつもこれだと。

この2つ要因が江戸前寿司の概念を窮屈にしている。

今は冷蔵庫も冷凍庫も高性能、輸送だって日本全国どこでもほぼ翌日発送で届く。

もう「保蔵性を高めるため」の仕事とか「江戸前王道のネタ」とか、古典的な概念に縛られず今の時代だからできる事をどんどん取り入れてみてもいいと思う。

日本海側の甘エビや、水深の深いところに住むボタンエビを生で提供出来るのは、現代だからこそ。

「ボイルの車エビ以外王道と呼べない」

もしそんな発想があれば、あまりにも鮨の発展性を狭めている気がする。 

僕は決して、火入れした車エビを鮨として否定しているわけではない。

あれの完成度は尋常じゃなく高い。

ただ、

「色々なエビがあるから色々と使ってみたい」

と言うのが今の自分の率直な好奇心だ。

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それは時に王道から外れるかもしれないが、王道とは自分達で時間をかけて文化的に作るもの。

今から始めれば50年後には王道と呼ばれているネタがあるかもしれない。

だから脱江戸前を自信をもって掲げればいい。

この話を以前別の鮨屋の友達に話したところ、

「なら外国産はどう思いますか?」

と訊かれた。

確かに…。

脱江戸前、と言う事で東京湾にこだわらず枠を広げてみた。

全国どこの場所でも、どんな魚だって鮨に合うなら使ってみたい。

なら外国産はどう思うのか?

発達した冷蔵と輸送システムを駆使すれば国境は超えるのか?

僕の答えは、ノーだ。

ただし現時点での話。

外国産に関しては、僕はポジティブな姿勢をもっている。

日本の近海は海流が交じり、世界屈指の漁場なのは間違いないと思う。

しかし、地球の7割が海で、そのうちの日本近海にしか良質な魚がいない、なんて事はありえない。

世界中に魅力的な魚がいるはずだ。

それでも日本の魚が良いされるのは、漁や処理や輸送など魚の扱いが突出しているから。

日本各地に行って見てきた、「神経〆・放血・冷やし込み・梱包」等の優れた処理が日本と同レベルで海外にも浸透しているとは考えづらい。

だから、現時点で日本産を超える魚は世界には少ない、というのが僕の意見。

そしてもう一つ、

いくら現代の輸送システムを駆使しても距離と時間には物理的な限界がある。

これは国内でも一緒。

東京よりも産地で食べるのがベストという魚だっている。

いくらなんでもブラジルから、神経〆した魚がベストコンディションで東京に届くとは思えない。

以上2点から、外国産は使えない。

ただ将来的に、国産に拘らない鮨屋になっている可能性は十分あると思う。

国産に縛られるのは、江戸前(東京湾)に縛られているのと何ら変わらないと思うからだ。

結局「江戸前鮨って何?」

最初のテーマに戻ってくるが、僕の中では3点ある。

・「東京湾で獲れた魚を使ったもの」
→これに関してはもはや完全に枠を出たと思う。

白身、コハダ、マグロ、車エビ、アジ、鯖、アナゴ、etc。

産地も魚種も広がりを見せ、東京の鮨屋で東京湾産の魚のみでまかなっているという鮨屋は聞いた事がない。

まだまだ開拓の余地はあると思う。

僕は脱江戸前の発想でウナギ鮨を取り入れてみた。

・「保存性を重視したひと仕事を施したもの」
コハダや鯖は〆る、エビは茹でる、マグロ漬ける、アナゴ
干瓢は煮付ける、etc。

今でも完成度の高い仕事はたくさんあるが、ネタの仕込みの可能性は十分広がっていると思う。

コハダや鯖を〆る理由が、脱水と臭みを除くためなら、僕は浸透圧を利用して真空パックを利用してみたいと思っている。

これは青森で教えてもらった事だ。

アナゴはガストロパックで、白身は氷温熟成で、今だからできる仕込みはトライしてみたい。

そして3つ目。
・「鮨は握り鮨であること」

僕は他の2つと違いこれだけは江戸時代の流れを受け継ぎたいと思っている。

なれ寿司でも、棒寿司でも、押し鮨でも、ちらし寿司でも江戸前は語れない。

握り寿司でなければならない、明確な理由がある。

なぜ握るのか?

当たり前すぎるその理由を考えた事があるだろうか?

握り鮨は江戸時代に生まれた。

だから僕は更に歴史を遡ってみた。

江戸時代よりずっと前、鮨の原型は保存食だった。

そこから握り鮨誕生までに、「鮨とは何か?」のヒントがあった。

それは日本人だから生み出す事ができたものだった。

続く…