料理において、「感覚」と「原理」が乖離していてもなんら問題ない時もあるが、
その二つが、二人三脚で揃うならば、その方が良いと思う。
閑話休題。
さて、改めて問いてみたい。
「炭火は、遠赤外線だから中まで火が通り、ふっくら仕上がる」
これは物理的に真っ赤な嘘!
と言う解釈で良いだろうか?
特に、
「遠赤外線は中まで火が通る」
という謳い文句。
これは全く逆の性質を持ち、むしろ
「赤外線はほぼ表面の温度のみが高くなる」
という解釈で間違いないと思う。
では何故よく誤解されているのだろうか?
それは電子レンジに利用されているマイクロ波に原因があると思う。
炭火と電子レンジ。
この二つは輻射熱という加熱方法は一緒だが、
炭火は赤外線、
電子レンジはマイクロ波、
とその物理的な違いは大きい事が分かった。
赤外線とマイクロ波は波長が異なるため、その性質も異なる。
赤外線に関しては、繰り返しになるが、
「食品表面のみで効率よく熱(エネルギー)に変わる」
という特徴を持っている。
それに比べマイクロ波は、
水分子をつなぐ振動子に直接エネルギーを加えるため、
「物質の内部まで放射によって加熱されるものの、水分子を含まず、電波が透過するものは、そもそも加熱されない」
という特徴を持っている。
「遠赤外線が食品の中まで浸透する」と誤認された原因は、
遠赤外線が赤外線の中でも波長が長く、
隣接するマイクロ波の特徴と混合されたからではないかと考えてみた。
ちなみに、
「遠赤外線」に比べて「近赤外線」は、
他の赤外線に比べて吸収率が低くく、
表面を透過し、
数mm内部で熱に変わる。
つまり内部が加熱されても、せいぜい表面から数mm程度。
「中まで火が通って、ふっくら」
にはならない。
そもそも、キンメダイの件でも書いたが、
加熱しすぎるとタンパク質は固まり、
食感は硬くなり、肉汁を失う。
炭火が「中がふっくら」仕上がる理由は、
表面が素早く熱で固められので、
旨味成分が流出せず、
中は表面からゆっくり加熱され、
水分が保たれてジューシーだからだ。
決して「中まで火が通っている」ためではない。
炭素自体が酸化して燃焼する炭火は、
表面の水分が蒸発し、
「焼き色が早くつく」
「表面がカラッと乾燥した状態に仕上がる」
利点が生まれる。
表面は香ばしく、中はジューシーに。
炭火だから体現できる火入れだ。
これが分かっているから炭火焼が上手いわけでもなく、
白炭と黒炭の事や、
鉄串と竹串の違い、
七輪のセラミックと炭台の違いとか、
炭火と薪火、
追求したい事は盛りだくさん。
その他の火入れ技術もまだまだ勉強中だが、
次回はスッポンのあの疑問を書いてみたい。

