『閲覧注意』 
以下 あまり軽いネタではありません。
苦手な方は引き返してください。
――――――――――――――――――――




197×年



東京都渋谷区 渋谷駅




寒い 暗い 



冷たい箱の中で 



僕は大きなため息をついた



あなたにさえも 望まれないのなら


いっそ殺してくれたらいいのに






なぜ 僕はここに居るの



嫌な匂いがする



汗と血と鉄の匂い






もしも僕が主人公なら



この先のストーリーは誰かの目に止まるのだろうか





さっきから 足音がひっきりなしに聞こえるけれど


誰も足を止めたりしない


きっと長くは生きられない







僕は呼吸するのをやめた





だって なんだか悲しいんだ



僕に誰も気付かない







人の喧騒が少なくなった そんな頃



近づいてくる重い足音




すぐ近く 耳元で響く 誰かの声



眩しい光が 一瞬見えた






〇月〇日



それは 僕が生まれて そして死んだ日







******************

1960年代まで 

捨て子は神社や寺、病院、商店など 
比較的見つけてもらえそうな場所に身の回り品や手紙、
子の名前などを記した紙などを添えて捨てられている事が多かった。



しかし、1971年 コインロッカーから乳幼児の遺体が発見される



それ以降「コインロッカーベイビー」は珍しいものでは無くなり

コインロッカーの秘匿性に伴い捨てられた子は見つけてもらえる事無く

死亡するケースが増えた


運よく見つけてもらえた子の親を探しても 結局のところ「未婚の母」が多く

児童養護施設やもの心つく前に養子に出される




俺の3歳下の友人に「養子」が居る。


彼は中学卒業と同時にその事実を養父母から知らされるまで

その事実を知らなかったそうだ


以前飲んだ勢いで彼が言った



「もしも本当の親に出逢ったら 水の中に沈めてやりたい」



体調を崩すと 良く夢を見るそうだ


暗くて 息苦しい 何か嫌な匂いのする空間の夢を



彼自身も自らの「出生」にかかわる事は知らされていないらしい



その彼から 昨年の夏、唐突に連絡が来た




「俺さ、多分 コインロッカー だと思うわ」




理由などは分からない 覚えているはずも無い


まして それが真実かどうかも分からない



しかし漠然と思い至ったという


自分の出生の秘密



彼はずっと欲しかったんだと思う 


自分がどこから来て 今どこに居るのか

誰が自分を愛し 自分は誰を愛しているのか


その確信がずっと欲しかったに違いない




「そうか。見つかって良かったな」



「あぁ…。そうだ、今度はいつ帰ってくるの?またあの店で飲もうぜ」





実家に帰った時 彼を誘って飲みに行った


いつものあの店で飲んだ


くだらない話でバカ笑いして 結局外が明るくなるまで



「じゃぁ また」 と別れて手を振った




客の疎らな始発に乗って


少し寝ようかと目を瞑ったけれど


朝日が眩しく瞼を射した


朝日なのにTシャツから出てる腕をジリジリと焼く


「あちぃっ…」



腕を擦って  ふと思った




コインロッカーに射した光はこんな風だったのかもしれない… と




そう思ったら



万が一にも 彼が コインロッカーで いのちを落とさなくて良かった 


俺の人生に 彼が居てくれて良かった と



俺は只々感謝した




尻のポケットで携帯が鳴る


「また飲もうぜ!(≧∇≦)」



と 3つ下のバカからのメール





「うるせぇよ。ねむいからほっとけ。またな。」




そう返して 目を瞑った


相変わらず 朝日は瞼の上を照らし続けた