僕もね 少し考えてるんだ

君より 全然オトナじゃないけれど


――――――――――――――――

喫茶店の片隅で 僕はいつも通りぼんやりとしていた

木目調のシックな店内 独りになりたい時

良く訪れる場所だった

真っ赤なリコリスの花が一輪 

カウンターに飾ってあった

――――――――――――――――


君との事も「必然」で

今 一人で居る事も

きっと「必然」なんだろう


―――――――――――――――

この店のカフェラテは きっと日本で一番美味い

温かそうな湯気が そっと気持ちをほぐしてくれる

―――――――――――――――


あの頃は隣に居るのが当たり前で

「1人」なんて考えもしなかった

なのに

今は「1人」の使い方を色々考えたりしてる


それならそれで 僕はなんとかやっていけるんだ


さほど美味しくは無いけど、腹いっぱいにはなる飯も作れる

寂しい夜に相手してくれる 友達だって何人か居る


―――――――――――――――

カフェラテを半分程飲んだ頃

店のドアが音を立てた

そこには知らない女の人が立っていた



そう… 想い出した



君も良く このタイミングだった

待ち合わせ 

いつも少し僕が早く着いて

カフェラテを半分飲んだ頃

「ごめんね」と慌てながら入ってくるんだ


僕は 懐かしさに 

少し胸が苦しくなった

―――――――――――――――


僕らはオトナに成りすぎたのかな

声も出さずに泣くなんて 

そんな事しなくても 良かったのに


繕う事など必要無いと そう言ったのは君だったね

唯一の僕で そのままでいいと

小さな手のひらが教えてくれたのに


あの日失った「自分らしさ」を


別々の街で 空の下で

今も まだ探してるけど

いつか 見つけられる日がくるのだろうか


―――――――――――――――


君は今頃どうしてるかな

温くなった残り半分を持て余しながら

僕は携帯に目を落とした



もしも 今 電話をしたら 

君はきっと出るだろう

だから 僕は電話をしない


今 君の声を聞けば 

僕は何もかも忘れて

ただのバカになってしまうから


―――――――――――――――


もっと 君に伝えれば良かった

沢山の気持ちを もっと素直に


今なら 素直になれるかな

いや 君をただ困らせてしまうだけかもしれない


―――――――――――――――

もう冷たいカフェラテを 一口飲んで

誘惑を ジーパンのポケットにねじ込んだ




リコリスの花は嫌いだけれど

もう少しだけ 眺めていようか

温くなった半分を 僕がちゃんと飲み終えるまで



リコリス






Raid