夢の中で
白い服を着た少女が囁いた
『私の事が見えるのね? じゃぁ私の声も聞こえる?』
その少女は「椿子」と名乗り
僕の右手を握り 『あの子を助けて』と 手を引いた
僕は
はっとして夢から覚めた
まだ外は暗かった
右手には 少女の手の感触が残ってる気がした
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あれはたしか12月
皇居東御苑
疎い僕が君に尋ねた
「あの花はなに?」
君が答えた
「あれは椿」
そこには小さな白い花が咲いていた
『白侘助。』
「椿って、もっと大きくてさ、ピンクとか赤いやつを想像してた」
僕は両手で大げさなほど 大きな花を作った
「ばかね。それじゃ牡丹じゃない」
君が僕の手を引いて
沿道の花を一つ一つ教えてくれた
たわいもない ただの散歩
…………
懐かしいな
四角い天井を ぼんやりと眺めながら
僕はゆっくり思い出した
…………
あの日は たしか寒い日だった
僕のコートのポケットに
お気に入りの「ミント」が入ってて
食べた君は いつものようにクシャミをしたんだ
手を繋いで 君と歩いた
あれは たわいもない ただの散歩
…………
もう少し寝よう
薄暗い部屋で
僕はそっと 瞼を閉じた
…………
「ねぇ あの花はなに?」
「あれはね……」

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