麗花 53歳
スナック経営
好きな色:赤

 

 

 
香織との旅は
とても意味のあるものになった。
 
私たちは永い間
意味のない距離を取っていた。
 
それは、
 
お互いに
お互いのことを
認めたくない気持ちがあった
 
のだと思う。
 
香織は、専業主婦で
 
ずっと夫に頼って
甘えた生き方をしていると
 
思っていた。
 
だから、好きになれなかった。
 
実際は違った。
 
家族のために、
 
自分の
心も体も使い切るなんて
 
私には出来たかしら?
 
家族と縁を切って
家を出た私は
 
家族に対して
無責任で
 
一人で
苦労して生きてきたと
思ってるんだから
 
愚かな話よね。
 
香織は、優しく強い心を持ってる。
 
* * * *
 
姉さんとの旅は、
ほんとに楽しかった。
 
今まで疎遠にしていた分
 
お互いの事を
一日中、夜遅くまで話続けた。
 
姉さんだけには、
 
自分の気持ちを
ありのままに話せる。
 
姉さんは
ひとりで自由に生きていると
 
思ってたけど。
 
実際はそうじゃなかった。
 
自分でお店を運営して
 
家族に縁のない女の子を2人も
面倒を見ていた。
 
姉さんらしい。
 
子供の頃、
いつも私のことを助けてくれてた。
 
姉さんは、優しくて強い。
 
* * * *
 
 
麗花:
香織。ごめんなさいね。今まで。
私が、話を聞いてあげていたら
もう少し楽に生きれたような気がする。
 
香織:
私こそごめんなさい。
姉さんが家に戻ってこれるように
父さんを説得できれば良かった。
 
麗花:
有難う。
でも、私の今までの人生は
辛いことの方が多かったけど
たくさんの事を得たと思うの。
とても楽しかったわ。
 
香織:
そうね。
色々あって辛かったけど
今は、すべての事を受け止めて
自分の中で整理することで
すべてが良い経験だと思えるようになったの。
姉さんに話すことで、完全に
過去の事として終えることができた気がする。
 
麗花:
あなた、昔やってた草木染を
また、始めたら?
 
香織:
実は、知り合いの女の子に教えるために
少し始めたところなの。
 
麗花:
そうなの?良かった。
あなた、あれをやっていた頃が
一番あなたらしく輝いていたから。
 
香織:
自分でもそう思うわ。
久しぶりにやって、
こう、胸が上のほうに上がって
跳ね上がるような感じ?になったのよね。
 
麗花:
大好きってやつね。
私は、今までの事を文章にしてみようかと思うの。
 
香織:
それ、いいじゃない。姉さん。
だって姉さんはいつだって本を読んでいたもの。
私の記憶では。
 
麗花:
もうしばらく、私はこの島にいるわ。
 
* * * *
 
この暖かく、
明るい陽射しに
 
照らされていると
 
青白い肌が息を吹き返すようで。
 
永い間、
夜に生きてきた私には
 
少し立ち眩みがしそうで。
 
柔らかい木陰に座って
のんびりお茶を飲みながら
 
波の音、
風の音、
鳥の鳴き声、
 
遠くで交わされる
挨拶など
 
ぼんやりと
聞いていると
 
ふわっと頭に浮かんできた文字。
 
さらさらと書き留めていくと
ひとつの詩になった。