やわらかい手 | 蘭のブログ

やわらかい手

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2007年  監督:サム・ガルバルスキ

平凡な主婦として人生を送って来たマギー(マリアンヌ・フェイスフル)。
そんなマギーの孫が難病にかかり海外で手術するしか助かる道はないと言われる。
そのための高額な費用を捻出することのできない息子夫婦。マギーはかわいい孫のために何とか
収入を得ようとするが年齢と資格がないことで仕事がみつからない。ある日町で見かけた求人広
告をみて仕事をもらおうとするがそこは性風俗店だった。店のオーナーに手のやわらかさをかわ
れたマギーに与えられた仕事は、壁に空いた穴越しに手で男性にサービスするというものだった。
一度はとんでもないと店を飛び出したマギーだったが、高給は魅力で結局その仕事を引き受ける
ことにする。意外にも彼女のサービスはゴッド・ハンドと評判になり行列ができるまでの売れっ子
になってしまう。

一つ間違うと低俗な作品になってしまいそうな難しいテーマを、時にユーモラスに、時に物悲しく、
決していやらしくならずに描いています。
仕事に慣れてきたマギーが仕事部屋を花やお気に入りの写真で飾るシーンは思わず笑ってしまいます。
母親の仕事を知って激しくマギーをなじる息子に、彼女と険悪だった息子の嫁が「親は子供のため
に死ねる。孫のためにこういう仕事をして何が悪い。私は彼女を尊敬する。」といいます。
本来自分がしなければならないことをマギーがしてくれたことで孫への確かな無償の愛情を感じたから。

特別な資格もなく年齢も高い女性の働き口が無いのはいずこも同じなんですね。
茶飲み友達が結局親友では無くただの噂好きで、マギーの仕事を知ったとたん、(結構興味津津で仕
事の内容を聞いていたにもかかわらず)手のひらを返したようにマギーを蔑みますが、そんな彼女に
マギーが一発かませるシーンは、見ていてすっきりします。

平凡で家に入っていた主婦が社会に出て、収入を得ることの厳しさ、本当の人間関係、自分が必要と
されることへの満足等、家にこもっていたのでは決して得ることのできない経験を積んでいく過程が、
見ていて自分も一緒に成長していくように感じられました。

背景がイギリスの冬だったせいか映像が常に薄暗く、音楽がそれに合わせるかのようにエレキギター
のベンベンという暗いものだったのがこの映画をさらに重いものにしているのですが、テーマとの
バランスを考えると丁度良いということなのでしょうか。

この映画は東京ではBunkamuraル・シネマのみの単館上映です。
もっと広くたくさんの人に見て欲しいのに、残念です。