『メゾン・ド・ヒミコ』 | 蘭のブログ

『メゾン・ド・ヒミコ』

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2005年  日本
監督  犬堂一心



塗装会社の事務員として働く沙織(柴崎コウ)。ある雨の日沙織のもとに若い男、
岸本春彦(オダギリジョー)が訪ねてくる。

彼は昔幼い沙織と母親を捨てて家を出て行った父親(田中泯)の恋人だった。
沙織の父は家を出た後、ゲイバー「卑弥呼」の二代目を継いでいたが、今は引退し
大浦海岸の近くにゲイのための老人ホームを作っていた。

春彦は父親が癌で余命幾ばくも無い事をつげ、沙織にホームの手伝いをしてくれるよう、誘う。
父を嫌い、存在を否定してきた沙織だが、破格の時給と父親の遺産をちらつかされ、
手伝いに行くことを承諾する。

西欧のリゾート風プチホテルを改装したホーム「メゾン・ド・ヒミコ」には個性的で風変わりな
住人達が住んでいた。最初は住人達と距離をおいて接していた沙織だが、彼らは明るく
沙織を受け入れてくれる。そんな住人達に沙織もだんだん心を開いていく。

ベッドに寝たきりでだんだん弱っていく父親、その父親の若く美しい恋人春彦、そんな二人を
フクザツな思いで見つめる沙織、いつしかこの三人に微妙で不思議な感情が芽生えていく…



「純情きらり」の冬吾さんが、若くてエネルギッシュだけれど女にいい加減な塗装会社の専務
細川さん役で出てきます。カッコイイ!


海辺に建つゲイのための老人ホームというなんとも幻想的な設定の中に、現実的すぎるほどに現実的で
人を信じず愛さない、沙織が、その夢の世界をかき回すかのように現れます。

いつもしかめっ面をし目つきが悪く、お化粧もしないしおしゃれもしない、愛想が悪くて魅力
のかけらもない、そんな沙織とは対照的に、オダギリジョー演じる春彦は真白なシャツを着て美しく、
セクシーで卑弥呼のそばに付き添う姿は天使のようです。
本題とは関係無いですが、あんな春彦に最後まで愛された卑弥呼は幸せだな、と思ってしまいました。



♪あなたが嫌いだという沙織に「だったら私にも言わせて。あなたが、好きよ」という父卑弥呼

♪「卑弥呼に会うまでずっと一人ぼっちだった」という春彦に「私は今もずっと一人よ」という沙織

♪キスはしたけれど、そこから先へ進めない春彦に「触りたいとこなんてないんでしょ」という沙織



光るセリフがいくつもありました。



性的マイノリティーを徹底的に認めない人たち、いろいろな所で彼らは辛い目に会います。
近所の住人の目、からかいと嫌がらせの落書き、偶然会ってしまった昔の職場の人の心無い言葉、
嫌悪感を抱きながらホームの人たちと関わっていた沙織は、いつしか、彼らを受け入れ、
そんな迫害に怒り、みんなを守ろうとします。


ホームで暮らす人たちの一生懸命生きていこうとする姿や、その老人達と接するうちに
だんだん変わっていく沙織の心が、穏やかにやさしい目線で描かれていると思いました。


話の合間にホームから見える海の映像がはさまれています。
夏のギラギラした真っ青な海、雨で煙り灰色に荒れる海、夕焼けでオレンジ色に染まる海…
言葉にするよりも気持ちを表しているような気がしました。



それにしてもオダギリジョーはセクシーです。
ホームのスポンサーである金持ちのヨボヨボ好色ジイサン、働き盛りのノンケのいい男、果てには
落書きや嫌がらせを仕掛けてきた中学生まで、春彦に心を奪われてしまいます。

なかなかこういう味のある色気を出せる人は日本人にはいないように思います。
今回のような少し緩めの役でもそうですが、NHK大河ドラマ「新撰組!」の斉藤一で見せた
硬派な色気もたまりません!
これからも活躍に目の離せない役者さんです。


そういえば・・・
ドボルザークの「我が母が教えたまいし歌」が、ホームの住人たちにより演奏され、また映画の
エンディングでも流れます。

「老いた母が私に歌を教えてくれたとき、母の目には涙が浮かんでいた。
 今私が自分の子供にその歌を教えるとき、私の目から涙が落ちる」

ボヘミアの抒情詩人 Adoif Heyduk の詩に基づいた、「ジプシーの歌」の第4曲です。
好きな曲だったので、ここで流れた事に驚きました。
とても優しい暖かい詩で、この映画によくあっていると思います。