人にとって現実は岩盤のように固く、
過去の後悔や未来への不安にとらわれ過ぎて、
なかなか真実のベールが開かれないようです。


今回はそんな人間と魂とのギャップを、
物語を通してお楽しみいただきたいと思います。




 

私は先ほど53歳の若さで他界しました。
今、私は肉体を離れて病室の上方から、
死んだ私の周りで家族たちが悲しんでいるところを見下ろしています。
しかしながら、私はそんなに悲しんでもらえるほど、
両親にとっても夫にとっても良い娘、良い妻ではなかったと思っています。



 

私は子供の頃から母親似で美人の姉が羨ましく、
父親似の自分をみじめに思っていました。
自分の顔が大嫌いだったのです。
広い額、離れた眉に一重の目、厚い唇に丸い顎、全部コンプレックスでした。
中でも一番大嫌いだったのがイチジクのような形の大きな鼻です。



小学生の頃はクラスの男子たちからあだ名を付けられました。
そのあだ名は「鼻」でした。
特に私の噂話というわけではない時でも、
鼻や容姿に関する話題が聞こえてきただけで、
私はその恥ずかしさから赤面し顔がうつむきました。
そして、時に私は死んでしまいたいなどと思う思春期が続いたのでした。



 

中学生になってからは校則違反ではあったのですが、
友達みんなと化粧を覚えるようになりました。
もちろん、少しでも目を大きく見せ、
なるべく鼻を小さく見せるためです。


 

 

この頃、反抗期だった私は母親と口論になった時に
つい口走ってしまい後悔していることがあります。
「なんで、パパとなんか結婚したの!
ママさえパパと結婚しなかったら、
私は顔の事でこんなに辛い思いをしなくて済んだのに!!」



幼い頃は優しくて大好きだった父。
いつの頃からか次第に父親の顔を恨むようになり、ひどい娘だったと思います。
今でも罪悪感が絶えません。



 

しかし、そんな私も大学生になってから人生が明るく変わりました。
バイトでためたお金で幾度か整形手術を受けたのです。
それからというもの、周りから美人とか綺麗とか言われるようになりました。



合コンに参加しても必ずと言っていい程、男性にモテました。

初めて彼氏ができた時はバラ色の毎日でした。



そのうち、色んな男性とお付き合いするようにもなり、
男性馴れした私は有頂天だったのかもしれません。
モテない友達を可哀そうにと、
内心見下したり、
優越感をいだくようにもなっていました。

 

 

 

29歳の頃複数の男性とお付き合いしていましたが、
その中で私にプロポーズをしてくれた方がいました。
私も思いのほか20代の内に結婚をしたい衝動にかられ始めました。
特段彼を愛していたわけでもなかったのですが、
彼が比較的温厚で優しかったのと、お金持ちであったことを考慮して、
結婚相手に向いているなと判断し、思い切って結婚を決めたのでした。

 

 

 

それから約2年後に娘が産まれました。
娘は夫にも似ておらず、もちろん今の私に似ているはずもなく、
当然と言えば当然ですが、私の子供の頃にそっくりに生まれてきたのでした。

 

 

 

娘が高校生になった頃に何度か言われた内容があります。
それは、
「ママの顔って最近なんか不自然。私、絶対に将来、整形なんかしない。」
でした。

 

 


娘は私とは違い、自分の鼻をさほど気にしている様子もなく、
親子なのにこんなにも違うものかと感心してしまいます。

 

 

 

 

私自身は顔の整形をしたことに後悔はしていないのですが、
周りが思っているほど私はきっと幸せな人生ではありませんでした。
整形したくらいで、そうやすやすと劣等感というものは無くならないものだったからです。

 

 

 

私は50を過ぎた今も姉にコンプレックスを抱いています。
それどころか、コロナ以来、子供も大人もみんなマスクを付けている事に嫉妬さえしています。
何故私が子供の頃にコロナが流行ってくれなかったのか。
みんながマスクを付けるのが当たり前の世の中であったならば、
私は学生時代、堂々とあの大きな鼻をマスクの下に隠し通せたのにと。
そしたら私はきっとこんなに心の貧しい人間にならなくて済んだのに。
そして、もっと両親や夫や友達にも親切に出来ただろうにと・・・・。

 

 

 

病室で家族の姿を見下ろしたまま悔んでばかりいる私に、お迎えの方が来てくれたようです。
私はお迎えの方に従って魂の世界へ帰りました。
そこには数多くの魂たちが輝きを以て私を迎えてくれました。
もちろん劣等感など持っている者はひとりもいません。



私は魂たちをひとりひとり識別は出来るのですが、
よく見ると魂たちには顔がありませんでした。
それを見て私は一番大切なことを思い出しました。

それは53年前、私は魂を磨くためにあの両親の元に生まれたのだった、ということでした。
こんな大切なことを死んだ今頃になって思い出すなんて。



あんなに気にして悩みぬいた顔など私は最初から持っていなかったのです。
地位も名誉もお金も整形した顔も、魂の世界には一切持って帰れませんでした。
現実のすべては幻想でした。
ここに持って帰れるのはただ一つ、
どれだけ魂を磨き、
魂を進化させることが出来たかだけでした。

 

 

 

私は慌てて何度も何度も自分を振り返りました・・・・。

私は魂の輝きを失い、すっかりくすんでいました。ショボーン



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