「フィートさん…大丈夫なのか…!?」「分からない…行こう…!」
息も絶え絶え、ディザスターの問いに答える。
爆発は終わっているようだが、煙が絶えない。
まだこの基地はフィートさんが権利を持っているが、近々…というかこれから何年かのうちに、新たなボスに受け渡し、新しい構成員を組む予定だ。
だというのに、こんな瀬戸際でこの基地が狙われては…。
基地に入り、エレベーターへと直行する。
そして、真っ先に最上階を目指す。
「…これもまた、あの事件の犯人によるものか…?」
「…だとしたら…?」
「…フィートさんの安否確認が最優先だ…行こう。」
目的の階に到着した事を知らせる音が鳴る。
扉が、開く。
「うっ…!?」
「煙が…っ!?」
黒煙が、視界の一部を奪う。
その先に…
「誰だっ!?」
「その声…フィートさん!」
「テン!」
よかった、しっかりとした応答が聞こえる。
此方の声も届いているようだ。
…しかし。
「うわっ!?…大丈夫ですか!?」
「…ぐっ…何とか…な…」
身体の節々に打撲痕、そして流血。
見ると、片膝をつき立ち上がろうとしているが、直立は困難を極めているようだ。
「フィートさん、一体何が…」
「おぉ、ディザスターもいたのか…いや、突然爆発音が耳を劈き、同時に建物が揺れたと思ったら…直後に背後から強く殴られて…」
「顔は…」
「いや、一瞬すぎて、視認できなかった…」
「そうですか…」
フィートさんの力を以てしても、相手を確認できなかったのか…
「とにかく、急いで搬送を…!」
そう言い、フィートさんの身体を、急いでディザスターと2人で支える。
すると…
「うん?」
フィートさんのいた足元に、何かが見えた。
間違いない…これは…
「太陽の図形…!?」
かなり抜けている部分はあるが、丸の周りに放射状に線が3本…
今までの連続殺人事件の現場にも残されていた、太陽の図形。
それは、丸の周りにある線の数が、段々と減っているようだった。
つまり、これまでの経緯から考えて、これは間違いなく、例の太陽の図形と見て間違いがない。
という事は、連続殺人事件の犯人と同一犯…
その可能性が高いだろう。
そう考えていた矢先…
「うん…?」
「この音は…」
パトカーの音…
通報を聞きつけ、警察がやってきたのだろう…
何とも早いお出ましだ。
すると、徐にエレベーターが動き出し、軈て1階から人を乗せて戻ってくる。
扉が開いて、走って此方に来た警察の人達…
その中に…
「フィートさん!…それに、そこにいるのは、テンとディザスターか!?」
あのうるさい顔は…
「ハンター!?」
4年前、共に戦った仲間のうちの一人。
サングラスからしばしば垣間見えるドヤ顔が特徴の…
奴の名前は、ハンターだ。
「久し振りだなぁテン。捜査一課警部になった、ハンターだぜ?」
「は!?…警察の…警部!?」
うっそだろ!?
あんなうるさい顔の奴が警部なんて…
えぇぇ………
此方の驚愕には目も呉れず、ハンターは相も変わらずのドヤ顔を見せる。
まさかの再会だ…
…事件の事を調べていた矢先。
俺達のボス、フィートさんが襲われた、という情報を仲間から聞きつけ、俺は警視庁で知り合いの警部から話を聞いていた。
その帰り。
俺はその足でフィートさんの顔を見に、向かったのだった。
「ご無事で、何よりです。」
「あぁ、この通りだ、ザイディン。歩行以外に障害は無い。だが、歩くのにはまだ暫く困難を極める。リハビリは必須だろうな…」
「そう、ですか…」
「いやぁ、俺の戦友だったキリアの教え子、アクトの実弟であるお前が、心配になってこうして来てくれるなんて…嬉しくて涙が出るぜ。」
…安堵感もあるが、いたたまれない気持ちにもなる。
二足歩行を常日頃行っている人間にとって、歩行に障害があるのは、非常につらい。
「それにしても、たまたま近くにいたっていう、テンやディザスターが直ぐに駆けつけてくれてよかった。どうやら、テンもこの事件の事について嗅ぎ回っているみたいでな…」
「えっ、テンが…!?」
彼奴が………。
フィートさんが襲われた事件から少し経ち、落ち着いたところで、俺は警視庁へと向かったのだ。
あのドヤ顔警部から、今迄の事件の顛末について、詳細を聞き出そうという魂胆だ。
ある程度は報道から情報を得ていたが、この事件の謎を解くのには、情報が足りなさすぎる。
だから、俺は一昔前に仲間だったというツテを使って、情報を得ようと考えた。
警視庁の一室で、ハンターを待つ。
すると、漸く扉が開いた。
「お待たせ。」
「………。」
人を待たせたくせにキメ顔だ。
「…ハンター、例の事件について…」
「おう、何でも聞いて来いよ。」
「やはり、今回のフィートさんが襲われた事件も、あの連続殺人事件と同一犯なのか?」
先ずは愚問といったところだろうか。
「あぁ。孰れの被害者も、打撲痕を負っているという共通点もあり、何より決定的なのが、太陽の図形。形や大きさがあまりにも酷似しすぎていて、模倣犯である事も考えにくい。」
「…なるほど。」
かなり説得力のある、物的証拠だ。
「あと気になるのが、現場に残されていた戦闘痕。どれも、ただの戦闘痕にしては、あまりにも痕同士に距離が空きすぎているんだ。」
「『痕同士に距離が空きすぎている』…?」
「あぁそうだ。一箇所、血痕や打撲痕が密集している部分があったかと思えば、その周囲は何もなく、かと思えば離れた距離に同じように血痕や打撲痕が密集している箇所が複数…奇妙じゃないか?」
「…確かに。」
どの現場にもそんな特徴が残されていては、あまりにも違和感を感じる。
だがしかし、それが本当に事件の謎を解く鍵になるのだろうか。
「…それはそうとして、他の被害者と、太陽の図形に関しては…?」
「今年の秋頃に、3人が殺され…それぞれ、太陽の周りの線の数は、7,6,5…」
「…徐々に数が減っているな…カウントダウンか?」
「それが妥当だろうな。」
その3人の被害者が7,6,5で、フィートさんが3…。
「もしかして、イグラスは4か?」
「ご名答。それで今回のフィートさんが3だから、1つずつ減っているんだ。こんなにも被害が出てるのに…謎は解けないままか…」
一体何のカウントダウンなんだ…?
「そうそう、エピック病院にも、太陽の図形が2つ、残されていたのを知っているか?」
「えっ、そうなのか…?」
「やはり知らなかったか…線の数は、10と9…」
「10と9…?」
…8が抜けているな…。
「これまでの現場と違って、エピック病院には勿論戦った形跡なんて無いから、一体どんなメッセージがあるんだか…」
「…謎、だな…」
…これだけの情報では…まだ、何も分からない…
現時点では、そんなものか…
「…どのみち、まだカウントダウンは残っている。くれぐれも、次の被害者を出さないようにしたい…」
「あぁ…」
「それと、自分自身の身にも、注意してくれよ…」
「あぁ、勿論。」
会話が終わり、帰る準備を始める。
「また何か聞きたい事でもあったら、気軽に連絡してくれ。」
「おう、ありがとな。」
キメ顔を向けるハンターに、軽く礼を言い、立ち上がる。
「…あ、そうだ。」
「うん?」
「さっき、お前と同じく、この事件の概要を聞きに、ザイディンが来ていたぜ?」
「なっ…ザイディン!?」
「あぁ。」
ザイディン…彼奴が…
7年前に知り合い、それ以降は仲間として長い付き合いだ。
沢山の仲間の中でも特に親密で、常に兄のアクトを目指して向上心を欠かなさい、かなり真面目な奴だ。
そんなアクトは、今年の夏頃に殺人に加えて、殺人未遂をも犯し、今では刑務所入りしているが…
そんな兄を、彼、ザイディンはどう思っているのだろうか…
そうそう、彼ザイディンは、その兄アクトが弟子として稽古をつけていたディヴィラルと、ライバル関係でもあったな…
ディヴィラルともよく知り合いで、顔にバツ印の形の包帯を巻いているのが特徴的だ。
「一度、連絡を取ってみてはどうだ?…人手が増えた方が、色々な考えが生まれて、その考えも纏まるだろうし…」
「あぁ、そうだな…」
帰り支度に身を纏い、最後に挨拶を交わす。
「じゃぁまた。」
「あぁ。」
警視庁の出口へと向かう。
ザイディンか…まさか彼奴も動いていたとは…
これは本当に連絡を取ってみる価値がありそうだ。
出口を出て、ふと視線を移してみる。
「…ん?」
警視庁の入口の横…
壁に何か…
「これは…」
…間違いない。太陽の図形だ。
フィートさんの時と違い、丸の部分が塗りつぶされている。
そしてその周りの線の数は…
8…!?
「…刑事さん、これ…」
「うん?」
入口すぐ近くにいた、黒い帽子をした刑事に声をかける。
頬に傷があり、これまでに百戦錬磨をくぐり抜けてきたような痕が残る。
「これは…!」
「あぁ、例の連続殺人事件に残されているものと同じものだ。…何故ここにあるのかは分からないが、ともかく、上層部に連絡した方が良さそうだぜ。」
「そうだな…ありがとう。」
そう言い、その刑事は太陽の図形を写真に収めた。
そのまま警視庁を立ち去る俺を横目に、その刑事は、ポニーテールの金髪が美しい女性の刑事と、その図形を見ながら何やら話しているようだった。
…あんなところに8を示す図形が…
どうして…
…あれっ
今すれ違った奴…
白髪に、少し黒髪が混ざっていたような…
それにあの後ろ姿、背丈…
そのまま警視庁に入っていったが…
まさか………
今現在起こっている、連続殺人事件。
それに関しての情報を聞き出そうと、僕は長い付き合いの仲間であった警部と、面会をしました。
帽子とコートに青い眼鏡。
仲間だった頃とはまた一風違った佇まい。
僕は面会を終えて退室するところでした。
「…では、今後、この事件については私ではなく、ハンター警部の方から…」
「えぇ勿論。ありがとうございました。」
お礼を言い、僕は背を向けました。
歩き出し、そのまま警視庁の出口を出て、僕は帰路につきました。
続く。