とても、いい夢を見た気がする。ぼんやりと天井を眺めながらそんなことを考えた朝、冷蔵庫は空っぽだった。仕方がなく重たい足を引きずって向かった買い物から帰宅したと同時くらいにわたしの携帯が震えた。画面に映った文字に胸が躍る。会うのは確か、二週間ぶり。少しの手土産を持ち向かうは警視庁。
キャタナインの一報により会うことを許されるわたし達。貴方は、この逢瀬を喜んでくれているのでしょうかーー?
とある一室で行われるアガリの取り調べ。聞くところまだ終わっていないと言う。持参した手土産をキャタナインに渡して別の取り調べ室へと入った。
取り調べ室の隅に腰を下ろして本を開く。しばらく本の世界へのめり込んでいると、
「お待たせしましたね、お嬢さん。」
そんな声に顔を上げると逆さまの愛おしい彼のお顔。驚いて目をぱちくりさせていたわたしの思考はやっと追いついて、天井から吊るした糸からぶら下がっている愛おしい彼に、こんにちはと微笑み返した。
「今日のお相手は女の人でしたか?」
そんな質問に彼は少し眉をひそめて、いいえ、と落胆の声色。そのあとすぐにいつもの声色で、よかったと言葉を紡いだ。
「貴女が会いに来てくれたのでかまいませんよ。」
すっと触れる彼の指。嬉しくなってへにゃりと笑うわたしの頬にふわっと触れる彼の唇。
「す、ぱいだー…さん、」
「次はいつ会えるか分かりませんからね。今存分に触れておかないと…」
くふ、と笑った彼はスルスルと糸を伝って、とっ、と軽やかに天井から降りてぺたりと身体を密着された。
「蜘蛛さん、すき…」
その言葉は唇に消えていった。