「お人形さんになりたかったの。」
不意に言った言葉に彼は何故かと問うた。顔にはいつもの笑みはなく、あまり彼には似つかない真剣な表情。
「そしたらきっと大事にされるもの。」
「おや まるで今は大事にされてないような口振りですね。」
「そうじゃなくて…綺麗なままでしょ?わたしはこれから大人になって、知らなくてもいい汚いことも知っていって、そしたらもう…」
貴方に美しいって言ってもらえなくなっちゃう。その言葉は飲み込んだ。言えないわ。こんな醜い感情。泣きそうになって俯いた。そんなわたしの頬をなぞる彼の手。
「私は人形の貴女はあまり嬉しくありませんね。」
その言葉に戸惑い顔を上げると、ふっと触れる唇。顔がゆっくりと離れて焦点が合った頃にはまたいつもの笑み。
「だって人形は言葉を紡いでくれないでしょう?」
私は貴女の美しい声が好きだ、そう言ってまたゆっくりと顔が近づいてくる。
人間も悪くないと思った瞬間だった。
