○。魔女の蜘蛛と毒林檎 * -2ページ目

○。魔女の蜘蛛と毒林檎 *

「ああ、やはり貴女には悲鳴より嬌声がよく似合うーー。」



とんとん、と軽く叩いたとある寮の一室のドア。少ししてゆっくりと開かれたドアから顔を出したのは、本日のお目当て、真藤笑。

「おはよう、笑ちゃん。遊びにいこっ!」
「何処に?」
「警視庁!」
「…ヤダ。」

嫌そうに眉をひそめドアを閉めようとする笑ちゃんを阻むべくわたしもドアの隙間に手を差し込んで逆の方向へと引っ張った。

「冗談よ、冗談…!遊びにいこっ?エイちゃんもいないし、敏くんはデコちゃんとデートで笑ちゃんしか暇人いないの。ねっ?」

早口でまくし立てるように言葉を放つと、笑ちゃんははあっとため息をついて力を緩めた。

いつも通り忙しい街中を笑ちゃんと歩いていく。特にアテがあるわけでもなく、ただ彼に会えない時間を一人で持て余すにはあまりにも寂しすぎて、唯一このことを知っている笑ちゃんを連れ出しただけの、笑ちゃんにしてみればとばっちりだ。

「今日は蜘蛛(スパイダー)に会いに行かねーの?」

ぶらぶらと歩いているとふと笑ちゃんが言った。この間再生されたばかりだから次会えるのはまだ先かな、なんて苦笑混じりに返せば笑ちゃんは少し眉をひそめまた問う。

「何で…あいつなんだよ?別に悪い奴とは言わないけど…」

笑ちゃんの言いたいことはすごくよく分かる。でもね、笑ちゃん。

「じゃあ笑ちゃんはどうして男の子に生まれたの?」

その問いに笑ちゃんは口を噤んだ。当たり前の反応だろう。

「何でって…」
「それと同じよ。必然的に決まっていたの。わたしが女の子に生まれて、蜘蛛さんと出会って恋に落ちる。いじわるな神様が決めたのよ。」

笑ちゃんはとっても優しい子だからきっとこの先傷つくであろうわたしのことを心配してくれてるの。でもね、わたし幸せよ。女の子として生まれて蜘蛛さんに恋をして、会えなくて寂しくて辛く重たい日々も全部全部愛おしいのです。

だからね、笑ちゃん。

「心配しなくても大丈夫。ありがとう、笑ちゃんっっ!」

素直にお礼を言ったら笑ちゃんは赤い顔して目を逸らした。

貴方に会えない日々はあまりにもモノクロすぎて長く空虚に思えてしまうのです。

次はいつ、貴方に会えますかーー?