ベストセラーになっている「最後のパレードicon ディズニーランドで本当にあった心温まる話」(サンクチュアリ・パブリッシング発行、中村克著)に、社団法人「小さな親切」運動本部が2004年に実施した「小さな親切はがきキャンペーン」の入賞作品がほぼそのまま収録されている問題で、同本部は著者側から、酷似した文章を載せるという連絡を受けていなかったことが20日わかった。

 ほかにも、掲載されている複数のエピソードが、過去にインターネットの掲示板「2ちゃんねる」に投稿された文章と酷似していることも明らかになった。

 読売新聞掲載の作品とほぼ同じ内容だったのは「大きな白い温かい手」と題された文章で、脳 梗塞 ( こうそく ) で障害が残った車いすの夫とその妻が、「ドナルドダック」に背中や腕をさすられ、感激したという話。社団法人「小さな親切」運動本部が2004年に実施した同キャンペーンで日本郵政公社総裁賞を受けた作品に酷似しており、文末を「です・ます」にしたり、「重度の」を「重い」にしたりするなどの言い換えはしているが、文章の流れや表現はほとんど変わらない。

 この作品は同年11月24日の読売新聞夕刊に掲載されているが、執筆した大分県内の女性は、同書で使うことを一切知らされなかったという。女性は「ディズニーランドではなく、地元の遊園地に出かけた時のことを書いた」と話している。

 一方、2ちゃんねるには同ランドでの感動した出来事を紹介するコーナーがあり、そこへの書き込みと酷似した文章も、同書には複数収録されている。2ちゃんねるに書き込まれた時期は、同書の出版以前だった。

 同書の末尾には参考文献が挙げられ、「関連サイトの情報を参考にさせていただきました」との記載もあるが、外部の文章を引用したなどの記述はなかった。

 著者の中村氏は、読売新聞に載った作品がほぼそのまま収録されていることについて、「ネットなどいろいろなところから題材を仕入れたと本にも書いてある」と釈明。「15年間現場にいたから、こういう話はいくらでも聞いている。決してうそではない」とする一方、「全部本当かどうかは分からない」とも話している。

 同書の初版発行日は先月10日。発行元のサンクチュアリ・パブリッシングの鶴巻謙介社長は、「エピソードは、著者が見聞きしたり、ディズニーランドの社内で語り継がれたりしている話だと聞いているが、ネットや新聞に酷似した文章があるとは知らなかった。著者や編集者から詳しい経緯を聞きたい」と話している。

 同キャンペーンは1985年にスタート。「小さな親切」運動本部は、応募作品の著作権について同本部に属すると応募要項に明示している。同本部の山橋由貴子事務局長は、04年の日本郵政公社総裁賞受賞作品とほぼ同じ内容になっている「最後のパレード」の文章について、「こちらの入賞作品を少し手直ししただけという印象だ。今後の対応は弁護士と相談して決めたい」と話している。

 東京ディズニーランドを運営するオリエンタルランド広報部によると、同書には、来場者からの手紙に記されていたエピソードも複数含まれているという。著者の中村氏は同社に勤務した経験があるが、エピソードの使用に関する相談などはなかったといい、同部は「内部の情報が、我々の知らないところで使われたのは残念だ。何らかの対応を検討したい」としている。


 ◆「最後のパレードicon」=33章から成り、ディズニーランドであったとされるエピソードを紹介している。著者の中村氏について、同書の略歴欄には、1982年に同ランドを運営するオリエンタルランドに入社し、約15年間、社員指導などを担当したと記されている。発行元によると、これまでに約23万部が売れたという

by読売


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