誕生日カウントダウンのマイベストその2
マサムネさんのFM802レポ並みの長さですよ(笑
一番好きな映画
リンゼイ・アンダーソン監督 「八月の鯨」
老人しか出てこない静かな叙情的な映画です。
どのシーンも絵葉書に出来そうなほど美しい。
登場するのはたったの6人
可憐な妹役にはリリアン・ギッシュ(当時90歳!)
気位の高い姉役はベティ・デイビス(当時79歳)
幼馴染のティシャ役アン・サザーン(当時78歳)
ロシア貴族だったマラノフ候役にヴィンセント・プライス(当時76歳)
修理工ヨシュア役のハリー・ケイリー・ジュニア(当時66歳)
ちなみに監督は当時64歳でした。
(回想シーンと不動産屋の役でお若い方がちょっとだけ出てきます)
老いに悩み、老いを恐れている
家族を愛せずに悩んでいる
自分を愛せずに絶望している
優しい光が溢れる八月の鯨をご覧になっては如何だろうか?
岩波ホールは岩波書店が経営するミニシアターです。
創立20周年の記念作品として「八月の鯨」は上映されました。
この映画の上映後しばらくして、
リビー役のベティ・デイビスが亡くなったというニュースが入り
同ホールで再上映が決定いたしました。
(1989年10月6日 81歳でした)
合計で8回ほども通ったと記憶しています。
「ベティ・デイビスの瞳」っていう歌もあったほどに
クールな瞳が印象的な彼女が盲目の役で、
そして11歳年上のリリアンギッシュが妹役と・・・
なんとも意表をつかれる配役。
ニューイングランドの6つの州の中でも、
夏が最も美しいといわれるメイン州の小さな島が舞台です。
高く青い空、薫る風、煌めく海咲き誇る花々
住むことは叶わなくとも、一度は訪れてみたい場所です。
そこの入江には、8月になると鯨がやって来る。
小さな島のサマー・ハウスで夏を送る老姉妹の
ささやかな日常生活を描いた映画です。
まず、老姉妹の暮らしぶりがとても素敵なのです。
なんでもない普通な生活シーン
食事をつくり、掃除をし、散歩をして、髪を漉く・・・・
大切に使いこまれた品々、
無駄がないすっきりとした身の回り・・・
なにも起こりそうにない毎日。
時々訪れる幼馴染のティシャ。
手土産は野原で摘んだブルーベリー
姉妹の夫は先立っていますが、
それぞれが夫を思うシーンが実に印象的です。
妹のサラが一人46回目の結婚記念日を祝うシーン。
ユーモアに富み人生を楽しみたいと前向きなサラ
ドレスアップをして一人テーブルに向います。
赤と白のバラを花瓶にさし、ワインをテーブルに飾り
「白は真実、赤は情熱・・」とそっとつぶやきます。
・・いつもそうささやいてくれた夫を思い出しながら・・・・
大切そうに抱えた小箱から小さな写真立てを取り出し
夫の写真に優しくキスをする。
「あなたが生きていれば・・・」
思い出のレコードをかけ
赤いバラを頬に押し当てる・・・
リビーの孤独もまた深い。
他人に依存しなければ生きていけない自分に腹を立て
言葉にトゲを持つようになっていた。
そのトゲは周りの人を全て傷つけていく。
目が見えなくなったリビーの手が
鏡台の引き出しから小箱を探り当てる。
小箱の中から取り出した封筒。
そっと優しく取り出した遺髪。
静かに思いを込めて頬を・・・唇をなでる。
見えない目で遠く思い出を見つめる。
いいようもなく美しいシーンです。
それからもう一つ忘れられないシーン
人を拒まないセーラはマラノフ候を夕食に招きます。
快く思わないリビーは手ひどい言葉で彼を拒絶する。
気まずくテラスに出ると
海面に月の光が映えキラキラと輝いている。
セーラはマラノフ候に「人生が長すぎると思う?」と尋ねる
「思わない」・・・と答えた彼は海に目を落としこう続ける。
月が波間に銀貨をばらまいています
あれは決して使えない宝です。
ロシア貴族だった彼は明日の行き先も分からぬ
流浪の生活を送っている・・・と見抜いたリビー
生活のためにと親が残してくれた宝石はあと一つ
残り少ない人生には十分過ぎる・・・と言いながらも
不安は隠しきれない。
そんな彼は使えない銀貨を心に沢山もっている。
以来キラキラの水面を見る都度に思う。
「使えない銀貨」がいっぱいあって心が温もるなぁって。
最後この映画は
「鯨を見るための大きな見晴らし窓を作りましょう」
そう言って、青い海にむかう小道を手を繋いで歩き
しっかりと肩を抱いて海を見つめるシーンで終わります。
窓から見える新しい景色に胸が弾みます。
顔や手に深く刻まれたシワを
「美しい」と実感したのは初めてだった。
サラがマラノフ候と食事をする前に
身支度を整えるシーンはドキッとします。
手馴れた様子で柔らかい金髪をくるりとまとめ
お気に入りの髪飾りでふわりと留める・・・
ドレス選びに少し迷う・・・
粉おしろいをはたき、赤い口紅をそっとひく
「どうですか?」と彼の前に姿を現す。
「美しい・・」と目を見張るマラノフ候
あ・・・・私そんなワクワクもう既に忘れているな・・・・
老いて美しくありたい。
だったら今持っている全てを大切にしよう
あの時もらった愛情や言葉を
丁寧に磨いて宝石箱にしまっておこう。
絶望しないで前を向いていこう。
そんな小さな決心を抱かせる作品との出会いでした。
若い方にこそ観ていただきたい作品かも。
この道の先になにがあるか?
そんなことわからない。
明日が来るってことが大事。
以上大好きな映画を紹介をさせていただきました。




