私は、テレビをあまり観ない。いい方が悪い、テレビ番組をあまり観ない。テレビはついてる。じゃなにしてるの?YouTubeをテレビで観てる。
大抵は車やバイクのレストアものか音楽系が多い。有名YouTuberの動画は一切観ない。ひとつだけ例外的に観てるものがある。
『きほんひとり』さんだ。
57歳、無職。初老の男性が淡々と日常を、お洒落とか映えとか全く関係なくぼそぼそと語る。決して食い入るように観てるわけじゃない。ただつけて垂れ流しているだけだ。
動画の中で彼は自分の少食を嘆く。彼の半分も食べられない私はどうなるのかな。
私は、きったないオッサンがぼそぼそ喋るだけの面白くもなんともない動画が、何で心地良いのか考えた。
ほとんど就労経験もなく、80をこえたお母さんと 二人の知的障害をもつ弟の世話をしている。そんな動画を観ながら、ハッと気付いた。
そんな状況でも、彼には悪びれる様子や暗い感じが全くない。下を向く感じが全くないんだ。凄いな~。
おそらく、色んな事に造詣が深いんだろうな。そんな過去をおくびにも出さず、一切自慢もしない。押し付ける感じが全くないんだ。
彼と私の共通点は、無職ってだけだ。でも私は、こんな病気になって動けない。
見栄と経験値だけで会社員を乗りきろうとしたが病気になって辞めざるを得なかった、無職にならざるを得なかった私と、自ら無職を選んだ彼。
何が正しいかなんて誰にもわからない。言える事は、彼は掃除も洗濯も出来る。車を運転して買い物にも行ける。何より食べられて歩けて喋る事が出来る。いわゆる普通の価値観にがんじがらめでそれを一切疑って来なかった私は
、今となっては何も出来ない。
その圧倒的な自己肯定感の前では、私は負け組だ。自己否定と罪悪感しかない。
背伸びや贅沢(どちらかといえば倹約家で質素)とは無縁の彼の等身大の動画を観て、自信満々でこれでいいんだって彼の思いに触れた時、人としての凄さを感じた。凄いな~とか色んな生き方があるんだな~。って思った。私は何も知らない単なるバカだった。
でも5年くらい前なら、こんな病気を知らなかった頃なら、こんな動画見向きもしなかっただろうな。なんだったら一番かろんじてた人間なんだろうな。
彼にも、色んな葛藤があるんだろうな。他人の思いや考えなんて解らない。
もうひとつびっくりした事がある。彼が『源氏パイ』を食べてたのだ。
へぇ~まだあるんだ。50年くらい前、小学校の頃好きだった事を思い出した。でももう綺麗には食べられないだろうな。