お坊さんがお経あげにくるから、実家に来いって親父が言うから行って来た。
事前に兄貴に、腰が痛いふりする事ともう喋れなくなってるので話を振らないようにしてくれってメールした。行かない選択肢もあったけど
みんな揃うのを楽しみにしてる親父の事考えると最後の親孝行だと思って行った。

親父に病気の事話すって選択肢はない。
絶対理解出来ない。そんな病気があることも知らないし、そんな人見たこともないんだから
それが当たり前。タバコやめて鰯を骨ごと食べてれば治るって言われるのがオチだ。

同年代の人なら『1リットルの涙の』って言えば
ドラマは見てなくてもおおよその事は解って貰える。ホントはそれじゃないんだけどね。
そういう意味では沢尻エリカちゃんとレミオロメンの功績は大きいな。

家に入ってからとお経が終るまではなんとか
ごまかしてた。
問題はその後の食事の時。
大皿からお寿司を取ろうとしたらシャリがくずれて落としてしまった。

その後私がなんか食べようとすると兄貴や 病気の事知ってるみんな(親父以外全員)の手がとまるんだ。会話もとまって私に注目する。何か手伝ってあげようと思っての事だとは解ってる。
同病の方なら解ると思うけど、見られたり緊張すると余計失敗するんだ。
私はもう食事を諦めた。

お盆休みに入ってから、ほぼ毎日河原へ歩きに行ってる。
連日30℃を超えるお盆の河原なんかに来てるのは、いわゆる週末ジョガーとかじゃなくて
アスリート系のトレーニングしてる人だけだ。

そんな中を老人のような足取りで、時に右に大きくひっ張られるようによたよた歩く私に、大抵の人は無関心を装ってくれるのだが、中には明らかに異物を見る様な視線をくれる人がいる。

その視線に『オレもお前ぐらいの時に、自分がこんなことになるなんて1㎜も思った事なかったよ』って視線を返す。
ゴムまりのように弾んで走り去っていく
その後ろ姿みながら
何十年後かに同じ病気で苦しめばいいと
思ってる。

私は決していい人でも優しい人でも
ありません。