私は普段
週4日働いているパートなのだが
左足小指を骨折してしまった関係で
しばらく会社を休まざるを得なくなった。

もちろん
家にいても安静にしなければならず
最低限のことしかできなかった。

もしかしたら娘は
自分のせいでママが骨折したと
思っていたかもしれない。

「私が代わりにご飯作ってあげようか?」

と言ってきた。

はい?
拒食症のあなたが料理作るの?

なんだか矛盾しているようであるが
他にどうしようもないので
心から

「ありがとう」

と言った。

そして
こちらから指示は出すにせよ
料理に関しては
ほぼ娘に任せるようになった。

どうやら
私が家にずっといるということは
娘の心の拠り所となったらしかった。

「ママが家にいると安心する」

その一言は
娘の心からの言葉に思えた。

また指示出しするのに
娘と並んで台所に立つようになると
ポツリポツリと
自分の気持ちをしゃべりだすようになった。

「わたし、こうやってママと並んで料理するの
夢だったんだ」

そういえば大分前に
娘とクッキーを作ったとき
大層楽しそうにクッキーを作っていたな。

「また一緒にクッキー作ろうね!」

しかしそれ以来
私が料理が苦手なことがあり
一緒にクッキーを作ることはなかった。

娘はお料理やお菓子作りが好きだった。
前にサンタさんからもらったプレゼントも
当時流行っていたクッキングトイだった。

私はそのことを分かっていた。

分かっていたにも関わらず
自分の苦手分野だったため
あえて一緒に料理したり
お菓子作りすることを
避けてきたのだ。

なんとなく
娘が心の底から求めていたものが
分かったような気がした。