とぅるるるるるる。とぅるるるるるる。
「はい。こちら110番です。どうされましたか。」
「ど、泥棒がはいったみたいなんです!すぐ来てください!!」
「場所はどこですか?落ち着いてください。」
「築40年の社宅の1階の部屋です。うちには小さな子供もいるんです。
すぐに来てください!!」
「わかりました。すぐに向かいますので、現状はそのままにして
落ち着いてお待ちください。お子さんにも怪我はありませんね。」
「怪我はないようです。機嫌もすこぶるいいです。でも、でも、あぁぁ。」
「奥さん、落ち着いてください。すぐに伺いますので」
「おねがいします」
ぴーんぽーん
がちゃ
「警察のものです。奥さん大丈夫です。落ち着いて。
まず状況の説明をしてください。」
「はい。今朝は私と息子は7時半に起きました。
夫はもっと早く起きているんですが、私起きられなくて」
「なるほど」
「そのあと、息子と私の朝食を用意したんです。
夫は先におきて自分で用意してすでに食事は済ませていました」
「ほほう」
「すべて用意して、二人で食べ始めたのは、たしか7時50分ぐらいだったと
思います」
「確かですか」
「はい。食べ初めて少ししてから、目覚ましテレビの今日の占いカウントダウン
が始まりましたからそれぐらいだと思います。」
「わかりました。続けてください」
「いつも同じようなメニューなんですが、息子のメニューは
6枚切食パンの耳を落としたものでチーズトーストを1枚つくり
プチトマトを2個、アンパンマンポテト を2個。
この日は2つとも食パンマンでした。急いでいたので選ぶ暇がなくて
私・・・・」
「なぜ急いでいたのですか」
「息子が早く食べさせろと、足にすがって泣くものですから」
「つづけて」
「それから、温めた牛乳を160ml、デザートにバナナを1/2本と
キウイを1/2個。息子はすべて完食しました。」
「それは1歳3ヶ月児の食事の量としてどうなのですか」
「わかりません。もしかしたら多いのかもしれませんが
息子はぺろりと平らげるものですから・・・」
「なるほど。大きいのでしかたないのかもしれませんね。
で、奥さんは何を?」
「私は、息子の食パンから切り落とした耳4本と、カフェオレを一杯。
バナナとキウイを息子と半分こしましたので、それとプレーンヨーグルト。
それから、4つ入りで100円だったのでついつい買ってしまったクリームパンが
2個残っていたので・・・1個食べました。」
「するとクリームパンは残り1個だったわけですね」
「そう!そうなんです。たしかに1個残っていたんです。
それが・・・・それが・・・・」
「奥さん落ち着いて」
「ええ。大丈夫です。食事が終わって、私は片づけを始めました。
息子にはいつものN○Kを見せて、オムツを替え、着替えをさせて
から放置していました。テレビがあればしばらくはおとなしく
してくれるものですから・・・」
「受信料はちゃんと払ってるんでしょうな」
「ええ!年払いでちゃんと払ってますよ!お疑いなら、引き落とされてる
証拠に通帳をお見せしますわ。」
「わかりました。あとで拝見しましょう。」
「食器の片づけが終わったころ、ちょうど洗濯機が終わったので
息子がまだテレビに釘付けになっているうちに、洗濯を干してしまおうと
ベランダにでました。息子にみつかると、自分もベランダに出たがって
ありとあらゆる邪魔をするので、そーっと出ました。」
「それは何時ごろですか」
「ご飯を食べてすぐ片付けたので・・・8時半ぐらいだと思います」
「わかりました。するとその間、息子さんは
家の中に一人きりだったということですね」
「ええ。でも玄関や窓には鍵がかかっていましたし、ベランダ側には
私がおりましたので、外部から人が侵入できるはずはないんです」
「ほう。密室というわけですな。ある意味。」
「そーっと出ても、途中で必ずベランダにいることがばれて、息子も
出せだせと騒ぎ出すんですが、珍しく今日はおとなしくて・・・・
結局全部洗濯を干せてしまったんです」
「この日は、いつもと違った、ということですね」
「そうなんです。珍しいなと思って部屋に入ると・・・・」
「入ると・・・?」
「こんな・・・・・・こんなものが!!」
「・・・・・・・・これはなんですかな?」
「なにって・・・クリームパンがはいってたパッケージ
ですよ!!ここに1個残っていたはずなんです!!」
「クリームパンは周りにはなかったんですね。」
「ないんです!どこを探してもないんです!」
「このクリームパンはどこにおいてあったんですか?」
「台所の・・・カウンターの上です。ちゃんと息子の手が
届かないように奥においておきました。」
「汚いですな。いや失礼。
ん?ちょっと左下のほうをよく見せてください」
「これですか」
「ほほう。なるほど。奥さん。この風呂のイスは
いつもここにおいてあるんですか」
「いえ。ここは通行の邪魔になるので、もう少し後ろの方の
冷蔵庫脇においてあります。」
「なるほどね。」
「あの・・・もしかして息子が犯人だと思っているのでは」
「ま、今の段階ではまだなんとも」
「そ、そんなはずありません!だって息子はあの
たくさんの量の朝食をぺろっと食べたんですよ。
そのうえ、クリームパンを1個食べるなんて・・・
私が食べた量よりも多くなってしまいます!!
いくら息子が大食いでもそんなっ・・・そんなこと・・・」
「奥さん、泣かないで。まだ決まったわけじゃ
ありません。可能性の一つだと言っているんです」
「あの子は・・まだ1歳3ヶ月なんです・・・・なのに・・なのに・・」
「お話はわかりました。では現場検証に入ります」
「お・・これは・・・クリームパンのかけらではないか?
おい。鑑識にこれを回してくれ」
「むむ。このテーブルのヘリについた白い粘着質のものは・・
これも鑑識だな。おーい!」
「思ったとおりだ。状況はすべて奴が犯人だと示している
まったく、いやな事件だ」
・・・・・・・・・・・・・・・・・
「奥さん。犯人がわかりましたよ。」
「え、本当ですか??犯人はいったいどこから
入ったのでしょう・・・なぜクリームパンを?」
「犯人は外から入ったわけではありません。
最初からこのうちにいたのです」
「ええっ。そ・・・それじゃあ・・・・」
「はい。間違いないですな。
犯人は、まず風呂のイスをカウンターの横までもってきて
足場にして、奥においてあったクリームパンを手に入れた
と思われます。そして、ダイニングチェアに登って中身を
取り出し、ちゃんとイスに座って食べたようです。
テーブルのへりについていた粘着質のものは
クリームパンのクリームでした。
よほど急いでほおばったのか、かけらが下に無数に
おちていましたよ。
犯人はイスに座ってテレビをみながら
悠々とクリームパンを食べていたようです。」
「ああ・・・・・なんということ・・・それでは・・・・
犯人は・・・・犯人は・・・」
「そう。こいつだ!!!!」
「む・・・・むすこおおおおおぉぉぉぉぉ」
・°・(ノД`)・°・
いろいろ疲れているかあちゃんに、お疲れぽちを・・・・
↓ ↓

