12/9から映画『ラーゲリより愛を込めて』が公開されましたね!!終戦後、シベリアで捕虜になっていた日本兵・山本幡男さんを主役とした映画です。実在の人物です。

主人公の山本幡男さんを嵐の二宮和也さん、そんな幡男と同じくラーゲリに送られた青年・新谷健雄役でSexyZoneの中島健人くんが演じています。


映画は昨年撮っていたとのことで構想はおそらくさらに以前からあったと思いますが、今日の国際情勢の中で、この映画の公開に踏み切ることはとても勇気がいったことと思います。

こうして無事公開になって嬉しくおもいます。



この映画の原作は、『収容所(ラーゲリ)から来た遺書』というタイトルです。

映画を見る前に読んでも、映画を見てから改めて読んでもどちらでもありだとおもいます。



以下、映画のネタバレになると思いますので、ご注意を!!


・あらすじ

 終戦後、ソ連の捕虜となりシベリアのラーゲリに送られてきた日本兵たち。過酷な環境の中、空腹で体力も気力奪われた彼らは、次第に祖国である日本に帰還する希望を捨てつつあった。

 そんな中、希望を捨てず、仲間たちを励まし続けた山本幡男とはどう言う人物だったのか。

 そして、彼を慕う人々は、どのようにして彼が残した言葉をソ連側の人間の目を掻い潜り日本へ届けたのか。

 


・感想というかなんというか

 戦争中の話というのはよく聞く機会があったのですが、シベリアでの捕虜としての生活とか終戦直後からの数年間の話ってあまり触れる機会がなかったのでそういった意味でも貴重な一冊でした。


 父から伝え聞いた話だと、私の祖父もシベリアに捕虜として抑留されており、まさに山本さんと同じく通訳的なことをしていたようです。(山本さんと同じ収容所だったかどうかは不明)。祖父に色々と話を聞けたらと思いましたが、残念ながら祖父はもう25年以上前に亡くなってしまっているので聞くことはできません。でも、こうして祖父も経験したであろうシベリアでの生活を少しでも知ることができてよかったです。


 本を読んで、山本さんの存在の大きさを感じました。山本さんのおかげで、辛いシベリアでの生活に少しでも希望を持てた人たちがたくさんいるってすごいことだなと。

 あんな状況の中、山本さんのように行動できる人が果たして何人いるでしょうか。山本さんのように希望を捨てずにいられる人が何人いるでしょうか。

 山本さんは冒頭で「生きていれば帰れる」と言っています。何度も何度も「日本へ帰ろう」と仲間たちに呼びかけています。周りの人が飢えて死んでいく、酷使されて体を壊して死んでいく中で放たれたその言葉はとても重いものだと思いました。


 また、山本さんを通じて文学の力を教えられました。私の夫は理系なのですが、たまに私が文系であることを見下す発言をされます。


『文学なんて社会で役に立たない』

『文系は理系ができない人間の逃げ道』


確かに文学で人の病気は治療できません。

何か便利な道具を生み出すこともできません。

だけど、山本さんは文学の力で周りの人の心に寄り添い、励まし続けられました。

生きる希望を持たせてくれました。

文学は、人の心を支える力になってくれることを山本さんは教えてくれました。

山本さんがいなければ、ラーゲリ内はもっと陰鬱な雰囲気になっていたと思います。


山本さんが紡ぐ言葉は、そしてそんな山本さんに感化された人たちが紡ぐ言葉はどれも美しく、現代の私たちにの心にも寄り添ってくれるはずです。



映画のノベライズ版もあります。