新しい形のホラーではないかなと思った作品が乙一の「死にぞこないの青」です。

須賀健太さん主演で映画化もされています。


・あらすじ

主人公である小学生のマサオは、自分がついてしまった些細な嘘をきっかけに、クラスの担任及びその担任に焚き付けられたクラスメイトたちから陰湿ないじめを受けます。

心がボロボロになっていくマサオでしたが、ある日全身が真っ青で傷だらけの男の子が目の前に現れます。マサオはその子を「アオ」と呼ぶことにしました。アオはマサオ以外には見えません。いじめにじっと耐えるマサオとは対照的に、アオは担任やクラスメイトにやり返せと言う考えの持ち主でした。最初はやり返すことに抵抗を示すマサオでしたが、そうこうしているうちにもいじめはエスカレートし、次第にマサオの心の傷は深くなっていきます。追い詰められたマサオはついにアオの考えに同調し、担任やクラスメイトへ反撃・復讐に出ることを決意して。。。一体、アオとは何なのか。マサオは無事に復讐を果たせるのか。


・感想

担任が率先して生徒一人をスケープゴートのようにしていじめをする。悲しいけど実際に起こりますよね。私も実はスケープゴートにされていた一人です。小学5年生から卒業までの2年間そんな扱いを受けていました。だから担任から陰湿な攻撃を受けているマサオの描写は見ていて非常に辛かったです。


アオの見た目は非常にショッキングでグロテスク。

もし目の前に現れたら叫んでしまうと思います。

でもマサオは結構普通に受け入れるし、なんなら普通に会話までする。最終的にはアオと手を組んで担任たちと復讐しようと決意する。アオは見た目はもちろん、思考もかなり残虐性を帯びているのですが、担任やクラスメイトからいじめられてるマサオにとっては、数少ない味方の一人なんだと考えると、なんだか怖いだけの存在ではないのではないかと思わせてくれるところがあります。


ホラーということでどうしてもアオの存在がホラーなんだという印象を受けますが、この作品でのホラーは、アオだけではないと思っています。

表面上は良い先生の仮面を被りながらも自分より非力な小学生を陰湿な形でいじめぬく担任、その担任に影響を受けて何の罪悪感も持たずにいじめに加担していくクラスメイトも十分ホラーな存在だと言えるのではないでしょうか。

「死にぞこないの青」は、人間にとっては恐怖とは何か?を問われる作品だと思います。