坊っちゃんで心の底から楽しいと思えたことがきっかけで、私はどんどん読書の魅力に惹かれていきました。その前に読んだ本ももう一度読んでみました。すると不思議なことに、以前よりも深く話に没頭することができました。
こうして私は本当に趣味を読書にすることとなりました。そして1年後には恋人ともお別れをし、ギャンブルもしなくなっていました。
心の底から、パチンコ屋に行くよりも図書館に行きたい気持ちが芽生え、パチンコする時間が惜しい、本を読みたいと思ったからです。
恋人との別れは、情もあったので正直苦しく思ったこともありました。
当時の理想を言えば、恋人と二人でギャンブル依存の縁から抜け出して、二人でもっと健全に生きていきたかったです。実際二人で何度もパチンコに行かない方法(代わりにカラオケに行ってみる)を模索して実行してみたり、使うお金を決めてそれ以上は使わないようにしたり色々と試してみたりはしていました。
だけど、恋人がギャンブルから抜け出すことはできませんでした。むしろギャンブルから遠ざかろうとすればするほど反動がひどくなり、自分のお金を使い果たすと、次は私のお金を貸すようにも迫るようになってきました。恋人は私より年下で、さらに留年していたためまだ学生だったのですが、気づけば学校を辞めていました。
私は、そんな恋人を見てこわくなりました。ギャンブルが怖くなりました。そしてそんな恋人に言われるがままお金を貸してしまう自分が怖くなりました。恋人をダメにしているのは他の誰でもない、私でした。この関係はまさに夫婦善哉の蝶子と柳吉でした。
だけど、私には蝶子のような解消も度胸もありませんでした。意を決して私は恋人に別れを告げることにしたのです。寒い日のことでした。
恋人と別れたことを後悔はしてませんが、恋人と過ごした日々の全てが無駄だとも思っていません。確かに二人には楽しい時間だってたくさんあったのですから。そして確かに恋人を私は愛していました。お金は確かに幾分か消えてしまったけど、恋人は私にいろんなことを教えてくれました。笑顔もたくさんくれました。温もりだってもらいました。好きだけど別れなければいけない、なんて言葉の意味を知った出来事でした。
恋人に別れを告げ、ギャンブルに別れを告げ、私は本格的に読書に没頭していきました。
⑥に続きます
