青空文庫は言わずと知れた著作権が切れた作品を収集、公開しているサイトです。

次に図書館に行く間、私は青空文庫を利用することにしました。


小林多喜二の蟹工船、太宰治の人間失格、芥川龍之介の羅生門など教科書で名前を見たことがある作家を探しては読み進めました。読破するにつれて眠くなる頻度も減り、長時間集中して読むことができるようになってきました。それでもやはりまだどこかで「無理矢理にでも読書を好きになる」という気持ちがありました。心の底から楽しんでいるのではなく(もちろん作品はどれも良い作品ばかりです)、なんとなくミッション感がありました。


そんな私でしたが、心から読書が楽しいと思える一冊に出逢います。それが、青空文庫にある夏目漱石の『坊っちゃん』との出会いでした。


青空文庫 夏目漱石『坊っちゃん」


読もうと思ったきっかけは、高校の教科書に載っていたことを思い出したからです。教科書なので当然途中までしか載っておらず、全容は知りませんでした。教科書の載っている話の全てを知らなくても特に気にせず生きてきたのですが、青空文庫で坊っちゃんのタイトルを目にしたとき、冒頭の「親譲りの無鉄砲で」という始まりを思い出し、無性にどういう話なのか知りたいという気持ちが浮かびました。

そんな気持ちは初めてでしたので、この気持ちを逃しては行けないと思い、早速読み始めました。


面白い。面白すぎる。

趣味を読書にするという無茶苦茶な目標を掲げてから、初めて1日で一気に本を読み終えた一冊で、私にとってまさに運命の一冊でした。

特に坊っちゃんが袂から卵を取り出して投げつけるシーンは声を出して笑いました。

そして1年後には友達を誘って聖地巡礼のために道後温泉に降り立っていました。


趣味を読書にするために本を読まねばならないという自分で課した圧なんてもはやなくなっていました。ここへきて読書は自由なものなのだと気づくことができたのです。


私は坊っちゃんを読んでからは、有名だからだとか話題だからとかいう本の選別基準を捨て、自分の気持ちに正直になって読む本を選ぶようになりました。


⑤へ続きます。