初めて行った近所の図書館。

それは、川崎市立高津図書館でした。

入ったらすぐ本の匂いがしました(当たり前)

毎日パチンコ屋でタバコの匂いに包まれてるわたしからしたら、新鮮な匂いでした。


本棚を一通り見て回ってからふと気づきます。

「何を読んだらいいんだろう?」

普通なら「読書が趣味だから」「こういう調べ物してるから資料を探したい」というような理由で図書館に来ますよね。

わたしの場合は「ギャンブルに代わるものとして読書を趣味にしたい」という、今思えば頓珍漢で無理やりな理由で図書館を訪れているわけです。そんな理由で図書館を訪れる人、そうそういないと思います。


そんな理由で来ているし、第一今まで本を読む習慣なんてない。夏目漱石とか、森鴎外とか教科書に載っている文豪は知ってるけど、それはもう一般常識として、国語の授業で習ったから知識として知っているだけ。現代の作家さんになると、どんな作家さんがいて、どんな物語を書いているのかも全然知らない。あの日、あの図書館にいた大人の中で、私が一番文学について無知だったんだろうなと思います。


それでも、本を読まないことには何も始まりません。私は、本棚を何周もしてこの人知ってるな、このタイトル聞いたことあるなと思う作家さんの本を手に取り、貸し出しカウンターに向かいました。

確か、堀辰雄の『風立ちぬ』だったと思います。

ちょうどジブリの『風立ちぬ』がやっていたのを思い出して借りたのでした。


早速帰って本を開きます。

正直に言います。途中、何度も寝落ちしそうになりました。活字を読む習慣がない私にとっては内容云々問わず文字の羅列を見るのは集中力が必要で、眠くなることでした。

それでも、パチンコ屋に行きたくない一心で読み進めました。そして気づきました。


「飛行機、出てこないな」


ジブリ映画のCMでは、飛行機が飛んでいたはずなのに小説には飛行機なんて全然出てこない。

もしかして同名の違う小説を借りたのかな?と不安なりながらも、いやあってるはずと思いながら読んでいました。


けれどもいくら読み進めても飛行機の「ひ」の字すら出てくる気配はありません。

でももう私は気になりませんでした。

飛行機が出てこなくとも、この小説は悲しみの中にも優しい気持ちが込み上げてくるような、美しく素晴らしい小説だと気づいたのです。

ちなみに当時これが堀辰雄自身の実体験を元にした小説であることは知りませんでした。

そして飛行機の要素が実は堀越二郎という名前の、別の実在の人物のことで、ジブリの風立ちぬは堀越二郎という航空技術者の半生と堀辰雄の風立ちぬを合わせて作られたものだということを後ほど知りました。本当に私は無知でした。


寝落ちしそうになりながらも二日かけて一冊読み終えたあと、なんとも言えない達成感がありました。

次に図書館に行くとしたら来週の日曜日。

それまではどうしよう?本屋さんに行く時間もなく、染みついたギャンブル脳が原因でギャンブル以外にお金を使うことにもまだ抵抗がありました。


そこで私は、青空文庫を知ることになるのです。