今回も有難い事に「続きが見たい」と言って頂けましたので、その続きを。

 

実はレース以上に緊張していたのが、この表彰式でした。

今まで国際大会で表彰された経験など一度もありません。

何をどうすればいいのか全く分からないまま表彰台へ。

メダルを首に掛けてもらい、花束を受け取り、国旗掲揚が始まりました。

 

「あれ?手は胸に当てるんだっけ?」

 

「じゃあ花束はどう持てばいいの?」

 

などと考えているうちに、君が代が流れ始め、

日本の国旗がゆっくりと掲揚されていきます。

 

……ところが、その最中不謹慎にも私の頭の中は別の事でいっぱいでした。

 

当時、私が知っている表彰式といえば競輪だけ。

競輪ファンだった父と一緒に、

幼い頃からTVで何度も見てきた特別競輪表彰式。

 

「この後、花束をスタンドへ投げるんだよな?」

 

「その次はチャンピオンセーターだったっけ?」

 

そんな事ばかり考えていました。

そして国旗掲揚が終わるや否や、私は勢いよく表彰台を飛び降り、

スタンドへ向かって一直線!

その瞬間、場内中が

「(´・ω`・)エッ?!」

という空気になった気がします。

 

まずは花束を思い切り放り投げます。

……ところが飛距離が足りず、フェンスの手前に「ポトリ」。

場内からは失笑がチラホラ。

慌てて拾い上げ、もう一度スタンドへ投げ入れると、」

今度は小さな女の子の前へ。

その子が嬉しそうに花束を抱えてご両親の所へ駆け寄ると、

場内から大きな拍手が起こりました。

 

「よし、次はチャンピオンセーターだ!」

 

そう思ってセーターに手を掛けた、その瞬間です。

向こうから大会役員の方がもの凄い形相で走って来ました。

「Nooooooooooooo!!」

大声で叫びながら全力疾走です。

どうやらチャンピオンセーターは投げてはいけないものだったようです(笑)。

 

後から日本チームのみんなに

「お前メダルまで投げるんじゃないかってハラハラしたぞ。」

と言われました。

……確かに、その勢いでした(笑)。

 

その後は観客の皆さんへ感謝を伝えたくて、自転車に乗って場内を一周。

フェンス沿いを走ると、一人の方が手を差し伸べて下さいました。

その手にタッチすると、次々に皆さんが手を伸ばしてくれます。

気が付けば外柵沿いを一周しながら、たくさんの方々とハイタッチ。

ホームスタンドへ戻ると、自転車を降りて一礼。

 

そして当時テレビでよく見ていたアントニオ猪木さんよろしく、

「ダァーーーーーッ!!」

と拳を突き上げると、その日一番と言っていいほどの大歓声を頂きました。

今振り返っても、人生で一番輝いた瞬間だったと思います。

 

……ただ、今になって思う事があります。

表彰式というのは、本来10分程度で終わるものだったのでしょう。

ところが私は花束を投げたり、セーターを脱ごうとしたり、

場内を一周したりと好き放題。

気が付けば銀メダル、銅メダルの選手はとっくにいなくなっていました。

結局、私一人で30分近く表彰式を続けていたようなものです。

40年以上経った今だから思います。

あの時お付き合い下さった他のメダリストのお二人、

大会役員の皆様、本当にご迷惑をお掛けしました。

 

……とはいえ、この後さらに「ヘルメット事件」の後日談など、

まだまだ色々と続きます。

もう少しだけ、お付き合いいただければ幸いです。