鬱と迂闊な月曜日 -30ページ目

終。

もしも、地球が壊れていまって、最後の日が来た時に、僕は誰に会いに行くのだろうか。

大切なひと。

たくさんいる。
選べない。
でも、時間が限られてる。

誰。

きっと、息子かな。
息子を包み込んで、そして地球は一瞬にして砕け散る。

最後はそれが一番いいかな。

魂があるのなら、息子と宇宙を彷徨いたいな。


アデュ。

未咲シキ。

ひとつだけ。

あの日、あの晩。
深夜3時の電話。

あの時、あの男の横にいたはずのあのひと。
どんな気持ちで隣にいたのか。

それだけは未だに聞けないでいる。

声の出せない僕に電話をかけてきた男。
まだ顔も名前も覚えている。
今もたまに思い出す。
その時間に目覚めることもある。

あの時、どんな気持ちでいたんだろう。

もう随分の時間が流れた。
あのことだけは全て許したはず。
忘れたはず。
だけども、しっかりと覚えてる。
声の出せない人間に対して、イキって電話をかけてきた男の声。

あの男だけは許さない。
絶対に許さない。

あの日から始まった復讐計画。
いろいろな手段を使って、相手の男のことを調べ上げた。

でも、結局あのひとを、あのひとだけを傷つけてしまう結果になった。
後悔しても遅い。
やってしまったことだから。
未咲の責任だ。
一生かけて償おうと思ってる。

いつか、あの時の、あの瞬間、どんな気持ちで電話を聞いてたのか聞いてみたい。

話してくれないと思うけどね。

ただ、僕はまだ後遺症が残っている。
夜中にハッと目が覚める。
悔しさやら、情けなさやらが込み上げる。

早く忘れたい。
心も体も。

いつか、忘れられるかな。
忘れたいな。早く。

時間の軸がおかしいんだ。
なぜ過去に、あの時だけに戻るのか。
ずっと、ずっと不思議たまらなかった。
この軸を戻して、自分でコントロールできるようになれば、きっといつか。


アデュ。

未咲シキ。

手術。

近づくにつれ、怖くなってくる。

大したオペじゃないけど、手術も入院も生まれて初めてのことで、何もかもが想像できない。

術後、未咲の右腕は平行に保たれたまま24時間固定される。
右腕が使えない生活。どうなるんだろう。

約、1ヶ月強、その状態が続く。

麻酔切れたら痛いらしい。
どれくらいの痛さか、これも想像できない。
尿道カテーテルも痛いらしい。想像できない。

疲れきっている左腕での生活。
ゴハンも全てのことを左腕でこなす。

これ以上の屈辱はない。
でも、起きてしまったことは仕方ない。
このケガを治すことが一番。

仕事から1ヶ月以上も離れる事も不安だ。

やっと、やっと、1年以上続いた仕事だったのに。
身体が鈍ってしまう。

息子の参観日も行けない。
しようと思ってたことが1ヶ月もできない。

この手術、入院が終わったら、鋼の心と身体を作る。

また一年頑張れるように。
早く一般就労に戻れるように。

それに少しでも近づけるように。

頑張ろ。


アデュ。

未咲シキ。