記憶。
楽しかった事。
悲しかった事。
ありますか?
思い出ありますか?
13歳のとき恋をしました。
毎日ドキドキして、抑えられない感情。
いづみ。
青春という言葉が嫌いないづみ。
中学の2年生から3年生まで同じクラスで過ごしました。
席が前後になったこともありました。
後ろがいづみで前が僕。
気持ちを伝えたい。でもできない。
そんな性格でした。
2年生の学園祭のときに、教室で二人きりになったことがありました。
チャンス!
でも僕は必要でもないハサミをかりることしかできなかった。
髪が長くてね、お下げをしてたいづみ。
あるとき席替えでまた席が前後になった。
今度はいづみが前で僕が後ろ。
いづみの隣の席はいづみの親友のゆきえ。
ある日ゆきえが僕に言った。
いづみの髪を三つ編みのお下げにしてあげてと。
そう。ゆきえだけは僕の気持ちに気づいていたんです。
後日談だけど、いづみも僕を好いてくれていたらしいです。
で、僕はドキドキで震える手で髪を編みました。
結局下手くそでゆきえに直されちゃったけど。
3年生最後の年。
いづみは学校を休みがちになりました。
たまに登校してくると、やっぱり可愛くてドキドキしました。嬉しくて嬉しくて。嬉しいんです。
ある秋の雨の日の放課後。
ゆきえに音楽室につれていかれました。
音楽室にはピアノの前に座るいづみがいました。
髪をバッサリ切ったいづみ。
なんかぼぉーっとその姿を眺めていたらゆきえがいなくなってました。
いづみにどうした?と聞くと、いづみは何も応えずにピアノを弾き始めました。
きらきら星。
すぅっと耳に音が入ってくる。
ちいちゃい頃から何度も聴いていた音なのに、なんだか違った。表現しづらいけど、なんか違った。
ピアノを弾いているいづみを見ながら心地良く入ってくる音。
ただそこに僕はたっていて、いづみが弾く。
弾き終わったのもわからないくらい見つめていて、気づいたらいづみは立っていた。
そこでようやく我に返って、上手だったと伝えた。
いづみは笑った。
窓の外を見るとマジックアワーで、雨は止んでおり、星が出ていた。
きらきら星。
もう暗いから帰ろうと声をかけると、まだ帰らないとダダをこねる。
どうしてかわからなかったけど、その時間を付き合うことにした。
人の記憶とは曖昧なもので、その時どんな話をしたのかを覚えていない。
振り返るととても大切な瞬間だったのに。
翌日からいづみまた休むようになった。
それからずっと卒業式まで。
卒業式の日にゆきえから一通の手紙をもらった。
いづみからだ。
僕の本名様。
から始まり、いづみの気持ちがたくさん書きつなれてあった。
最後にこんなことが。
ごめんなさい。ゆきえからは気持ちを聞いてました。
ごめんなさい。病気のこと黙っていてごめんなさい。
ごめんなさい。気持ちを伝えたかった。
でもね、この2年間楽しかった。
ドキドキしていた。こんな気持ちは初めてでした。
あーあ。気持ち伝えておけばよかったな。
口下手な君に。ちょっとヤンチャな君に。三つ編みが下手な君に。
ありがとう。
幸せでした。
私は君のこと好きでした。
そんな手紙を卒業式に、もらい、ゆきえからいづみが死んだ事をしらされた。
11月のことだったらしい。
ゆきえを怒った。
なんでしらせなかった。
なんでしらせなかった。
ゆきえはいづみから頼まれていたらしい。
弱る自分を見せたくなかったのだと。
記憶。
楽しかった事。
悲しかった事。
全部含めていづみとの思い出です。
誰にも話したことありません。
今では僕とゆきえしかしらないこと。
あの手紙今でも持っています。
消えたり薄れていく記憶もあると思うけど、あの13歳からの出来事を一生忘れることはないでしょう。
だってグレた僕を止めてくれたひとだから。
毎日をドキドキのきらきら星に変えてくれたひとだから。
ふぅ。
今の医療なら彼女を救えたのかな。
クソッタレと天に唾を吐くと自分に返ってくるんです。
楽しかった事。
悲しかった事。
忘れる必要はないし、乗り越えることでもない。
自分の心の中積み重ねていくのだ。
そうして心を強くしていく。
僕はね。
またいつか、どこかできらきら星聴こえてくるかな。
アデュ。
未咲シキ。