河内の空は、まだ朝の柔らかな光に包まれていた。午前九時を少し回った頃、私と妻、そして九歳の長男と三歳の次男を乗せた車は、佐賀へと続く道を滑るように進んでいた。車内は、子供たちの無邪気なざわめきと、これから始まる旅への期待感で満ち溢れていた。まるで、春の陽光を浴びて芽吹く草花のように、車内の空気は活気に満ちていた。
「佐賀までの道中、どんな話をしようか」と、私は運転しながら切り出した。頭の中には、長男の中学受験のことが渦巻いていた。もし受験を選ばなければ、彼は地元の中学校に進むことになる。私自身も妻も公立中学校の出身であり、そこにはかけがえのない経験があった。しかし、敢えて受験という道を選び、家から遠く離れた中学校に通うことには、一体どんな意味があるのだろうか。それは、まるで平賀源内が蘭学を通して日本の未来を見据えたように、子供の将来を見据える親として、重要な選択だった。
「熊本大学教育学部附属中学校って、どんな学校なの?」と妻が尋ねた。彼女の眼差しは、助手席から前方を、そしてその先の未来を見つめているようだった。高校はあるのか、どのような教育理念を持っているのか、そして高校や大学への進学はどうなるのか。三年間という月日は、まるで川の流れのように、あっという間に過ぎ去ってしまう。
「お弁当って本当なの?」と長男が、目を輝かせながら尋ねてきた。彼の頭の中は、新しい学校生活への期待と、少しの不安でいっぱいなのだろう。通学はどうするのか、何時に家を出て何時に帰ってくるのか、受験料や授業料はどれくらいなのか。これらの疑問を、この車の中で話し合うことに決めた。そうすれば、キッズも、一緒に話を聞くことができるからだ。家族全員で同じ方向を見つめる、それはまるで羅針盤のように、私たちの進むべき道を示してくれるだろう。
熊本大学教育学部附属中学校は、国立大学法人熊本大学の教育学部に附属する中学校である。公立中学校と同様に中等普通教育を行う一方で、教育研究の学校としての重要な役割も担っている。具体的には、大学と共同で教育の理論的・実証的研究を行い、教育学部学生の教員養成を目的とした教育実習も行っている。教育学部出身の同級生に話を聞いてみるのも良いかもしれない。
生徒たちは、部活動と課活動に積極的に参加している。運動部、文化部ともに多くの部が活発に活動しており、中には全国大会に出場する部もあるという。課活動は、この学校独自の委員会活動であり、生徒たちは十七の課に分かれて、学校生活の課題解決に取り組んでいる。近年、体育館やプールなど、多くの施設が改修され、非常に綺麗な環境となっている。全ての教室にクーラーが完備されているなど、学習環境も充実しているという。
入試対策については、附属小学校からの内部進学者は特別な対策は必要ない場合も多いが、外部受験者は塾に通い、特に算数の応用問題を重点的に学習することが推奨されている。過去問を繰り返し解くことも有効だ。
久留米附設中学校とラサール中学校の比較についても話が及んだ。九州で人気の高い私立中学校である両校は、どちらも高い学力レベルと伝統を誇り、多くの受験生から注目を集めている。久留米附設中学校は九州大学との連携が深く、理系教育に力を入れており、文武両道の教育を実践している。一方、ラサール中学校はカトリック系の学校で、宗教教育が特徴であり、規律正しく厳格な校風を持っている。どちらの学校も難関校であり、高い学力が求められるが、教育方針や学校生活は大きく異なっている。
春菊を育てるように、私たちの家族の未来も丁寧に育んでいきたい。そんな思いを胸に、私は家族との会話を楽しんだ。車窓から見える河内の風景は、のどかで美しく、私たちの心を穏やかにしてくれた。この穏やかな時間が、子供たちの未来を育む肥沃な土壌となることを、私は心から願っていた。
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