今日は作家の山本一力(いちりき)氏の文章を読んでみたいと思います

タイトルは「あるものを見つけにいく」です
ほなスタート☆彡
●縁に気づき、縁を生かす
夢が持てない。希望が持てない。明日が見えない……。今の時代、僕の子供時分には考えられないようなことで、人が悩んでいるんだなと思う。いろいろとネガティブな要素があってのことだろうけれども、突き詰めれば、悩んでいるのは二つに行き着くのではないか。一つは人との関わり方、もう一つは自分が何をやりたいかが見えないこと。実は人との関わりがうまくいけば、二つめもほとんど片づくんだよ。なぜなら、人とうまくつながりを持てないために、物事が訳のわからないほうへ転がりだすことはよくあるからだ。
人との関わり方では、帝国ホテルの小林哲也社長から教わった次の「しんげん」(←漢字が難しくて携帯からは字が出ず
)が大きなヒントになる。「小人は縁に気づかず。中人は縁を生かせず。大人は袖すり合う縁でも縁とする」。この言葉は人との関わり方を見事に言い当てており、人づきあいのヒントのすべてが含まれていると言っていい。
人とのつながりがうまくいかず悩んでる人は、「俺ってなぜ人と縁がないんだろう」「私って、人づきあいが下手な人なの」などと、自分でネガティブな言葉を吐いて、自分を納得させようとするが、本当は人づきあいが下手なのではなくて、縁に気づかないだけなんだな。それは、相手を見てないからなんだよ。例えば、空気というのはあって当たり前だと思っているから、普段はその存在に気づかない。縁もそう。自分でテンションを高めて目を見開き、ちゃんと心を開いていたら、気づかなかった縁がいっぱい見えてくると思うよ。
その縁に気づくだけで、人との関わり方はずいぶん変わってくる。さらに、縁を生かすこと、袖すり合う縁でも縁とすることができる人は、チャンスにも恵まれ、物事がどんどんいいほうに展開していくのではないかな。
●悩むことは贅沢
絶望したとか、もう生きていく気力がなくなったと言う前に、悩むということはどれだけ贅沢かを、もう少し本気で考えたほうがいい。
作家になる前、僕は仕事でしくじって億という途方もない借金を背負った。「どうやったらそのお金を返せるか」。普通に働いていたのではとうてい返せないから、思いついたのが物書きの道。実態がわかった今なら絶対に考えなかったけど、本がいっぱい売れたら、その印税で返せるだろうと甘い幻想を抱いたんだな(笑)。コピーライターをしていたから、文章は書ける。元手もいらない。単純に考えて、ある文芸誌の新人賞に応募したら、初めて書いた長編小説が最終選考に残った。
「これで物書きになれる」と喜んだものの、結局落ちてしまった。次の新人賞は一年待たないといけない。僕はどんな小さな賞でもいいから自分を認めてもらいたいと思って、いろんな文学賞に応募したけれど、どれもダメ。落とされつづけると、はたして自分の書いたものがイケてるかどうかもわからず、どんどん内にこもっていった。明日が見えない絶望感で、「俺にできることは何もないんじゃないか」と自分て自分を打ち消しにかかるし、「何で俺だけがこんな目に…」と自分を哀れみはじめる。もう、何度も挫けそうになった。
あるとき、ふと思った。「俺は今、生きていられるよな。かみさんも元気だし、子供も元気。金はないけれど、毎日明るく笑って生きていられる。このうえ何を贅沢なことを言っているんだろう」と。
お金を貸してくれた人が、「物書きになってお金を返します」という約束にもならないような僕の約束を信じて、返済を待ってくれている。それなのに、約束した自分が悩んだり、絶望してどうするんだ。そんな贅沢なことを言っていられる身分ではない。了見違いの考えをしていたことを反省し、「やるしかないんだ」と、前向きに書き続けたことで、三年目にオール読物新人賞をもらえた。あのまま、自分を哀れんで生きていたらどうなっていたかと思うと、ゾッとする。
つづく~

