「政治」とは、社会集団においてその必要を満たすための意思決定に至る調整プロセスである。

上記がthink Politics ! 第1回勉強会において「暫定的」に定義した「政治」の意味である。第1回勉強会では、「政治とは何か?」という根源的な問いかけに対して、参加者間で意見を出し合い、摺り合わせることを目的とした。

今回の勉強会においては、次の3つのことを目的とした。

①「政治」の一般的定義を整理する。
②各自の「政治」のイメージをもとに、think Politics ! として「政治」を「暫定的」に定義する。
③①、②に基づいて、各自で「政治」を定義する。

③は今回の勉強会をふまえて参加者各自が考えることなので、今回のブログでは扱わない。

では、①の「政治」の一般的定義から見てゆこう。言葉の意味を調べるにあたっては、国語辞典から調べるというのは比較的オーソドックスな方法であろう。

「住みやすい社会を作るために、当局者が立法・司法・行政の諸機関を通じて国民の生活を指導したり取り締まったりすること」。(三省堂『新明解国語辞典』第四版より)

つづいて、代表的な政治学者の「政治」の定義を2つほど紹介しておく。

「政治とは、国家相互の間であれ、あるいは国家の枠の中で、つまり国家に含まれた人間集団相互の中で行われる場合であれ、要するに権力の分前にあずかり、権力の配分関係に影響を及ぼそうとする努力である」。(マックス・ウェーバー)

「政治とは社会に対する価値の権威的配分である」。(デーヴィッド・イーストン)

イーストンの定義は大学で政治学の講義をとったことがある人であればおなじみのものであろう。実際、イーストンの名前を知らなくとも、イーストンによる定義で理解している人は少なくない。原文は"the authoritative allocation of values for a society"であり、私は"values"の部分を「稀少資源」と訳して習った記憶がある。ここで言う「価値」(私の習ったところの「稀少資源」)とは、天然資源、貨幣といった具体的な財のみならず、権力や政治的地位といった抽象概念も指すと私は理解している。

ウェーバーとイーストンに共通するのは、「政治」を何らかの「配分」と捉えている点だろう。ウェーバーが「権力」と比較的狭い意味で捉えているのに対して、イーストンは「価値」と広い意味で捉えているように思う。

さて、では今回の勉強会で参加者はどう考えていたのかを見ておこう。当日は4つのグループに分けられていたのだが、下記のような意見が出てきた。

グループA:
①人が集まったら行うこと。
②政治という行為を行わないと秩序が保てない。
③手段において行うべきことが決定しているときはそこに政治(闘争)はない。

グループB:
有限の資源の配分を議論し、決定するまでのプロセス。

グループC:
①人と人(利害者)間で意見の相違、対立が発生した際の「調整」。
②①で発生した調整の場において、その利害者間における最適解を決定するプロセスのこと。

グループD:
そこに集まる人々の全体最適や、人々が生活するにあたって平等なスタートラインに立てる機会を提供する公平な社会システムを作るために「意思決定」すること。


グループAからDのそれぞれの意見をふまえつつ最終的にまとめたのが、冒頭にも書いた「「政治」とは、社会集団においてその必要を満たすための意思決定に至る調整プロセスである」になる。

なお、この「必要」の中にグループAの「秩序を保つこと」と、議論の過程で出てきたの「関心」という概念が内在化されている。

正直言えば、今回の勉強会で摺り合わせた定義が満足なものだとは私は思わないし、おそらくその他の24名の参加者で心底満足した人はいないのではないかと思っている。この参加者の「不満足」いついては当初から私は予想していた。だからこそ、冒頭の勉強会の目的に「暫定的」という言葉をあえて用いたのである。

「暫定的」という言葉の使い方にはおそらく賛否両論があるはずで、参加者によっては「保険的」とか「狡猾」といったネガティヴなイメージを抱いた人も少なくなかったのではないかと思う。しかし、私がこの「暫定的」という言葉をあえて使ったのは、「各自が今後も折にふれて「政治とは何か?」について考えなくてはならない」という点と、「「政治」という概念を定義することが非常に難しい」という点を理解してほしかったがためである。

私を含めてthink Politics ! の参加者は、政治家でもなければ、政治学者でも、政治評論家でもない。それゆえ、「政治」についてひとつの考え方に縛られる必要は全くない。とすれば、今回定義した「政治」の概念が時とともに各自の中で変化する可能性は否定できないのである。

さて、文章の関係上、結論にいたるまでの議論のプロセスをかなり端折ってしまったが、当日の議論概要は以上の通りである。ここまで読んでいただいた方々は、それぞれ「政治」をどのように定義するであろうか?