faketownlife -2ページ目

faketownlife

この世界を嘘にするも真にするも自分次第。矛盾と言う名の海に溺れそうになりながら、「それでもなお」明日を目指すのです。

その後、数時間経たずに彼女からラインが。
「すごく癒されました。とても名残惜しかったです」

「名残惜しい」という言葉は意外で、一瞬ドキッとしてしまった。

「俺はすごく満たされたよ」

と返すと、

「残念ながら私は足りませんでした...もっと長くいたかったです」

そこで俺は「ごめん、俺ももっと抱きしめていたかった」

と訂正した。

「好き」という言葉を介さずに二人の想いを確認できた瞬間だった。


励ましたのも束の間、またしょんぼりしたりズドーンと落ち込んだ系のスタンプが送り付けられてくる。

俺はエガちゃんを駆使したり、エロ系スタンプを織り込んだりしたり手を尽くしたが駄目だった。

朝のそれが終わり、夜も送られてきたときは流石にお手上げ状態に。

俺は冗談でこう送っていた。

「もう、抱きしめたらいいの?」


それから数日後、会社の会議があり終了後、なんとなく彼女と二人だけの帰り道に。

前後左右見渡し、会社の人間がいないことを確認した俺は、彼女の頭をかき寄せてみた。

「大丈夫か?」と。

彼女は拒否するそぶりは見せず、されるがままだった。


それからまた数日後、彼女は俺の店に来ていた。

話しながら、なんというか、俺に庇護を求める感が半端なく、とにかく話を聞いてた。

「これは、きっと俺の勘違いではない」と確信した俺は、彼女を見送る際、事務所のドアの前で彼女の方に手を乗せ、そのまま後ろからハグをして、頭を撫でてやった。これは励ます意味でやったこと。

「つらかったね。ほんと、よく頑張ってるよ。」

そういうと、彼女は目に手をあて、涙を目に浮かべていた。

その日はそれ以上のことは無く、そのまま笑顔で送り出した。

それからまた数日後、再び彼女は俺の店に来ていた。用事があり「俺がそちらにいくよ」といったのだが、頑として譲らなかった。

用事があるというのであまり引き留めてもと思い、話はすぐに終わったのだが、この前のこともあり、なんか俺も別れがたい気持ちがあり、また同じ場所で再び彼女を後ろから抱きしめてみた。されるがままの彼女。だから俺は彼女を横向きにし、頭を胸にかき寄せる。「すごくホッとします」という彼女。そして彼女を正面に向け完全に抱きしめる。すると、しがみつくように頭を胸にうずめてくる。

「責任者だから、いつもしっかりしてなきゃだけど、だからすごくしっかりもののキャラにみられるけど、本当は甘えたくて・・・」それ以上は言葉にならず。とたんに彼女に愛しさ溢れた俺は、すっかり彼女のことを離せなくなってしまっていた。

30分はそうしていただろうか。

彼女の次の用事が気になり、二人は離れた。



仕事から帰ってきて、ふと目を机の上にやるとそ大切な人から貰った綺麗な装丁のノートが目に入った。
手に取ってみる。

あの人の手から手渡されたそのノートは、その人のぬくもりをそのまま伝えてくれる。

表紙を撫でてみる。あの人の頬を髪を撫でるように。

そしたら途端に愛おしさが込み上げ、同時に涙が溢れて止まらなくなった。

...ちゃん(涙)

恋しい

ただただ恋しい

恋しくて

恋しくて


思った。


やだ。


その世界から離れるなんてやだ。


やだよぉ...


やだ...


駄々をこねる自分の中の幼い命をどうすることもできない。

確かに、こんな俺のことを深く慕い思ってくれる今の彼女はとても大切な存在であり、愛おしい存在である。

けど、そう簡単にあの人への想いをどうこうするなんてできない。

仕事から離れて緊張感から解放され、車で1人になると、いつも気づけば泣きながら運転している。もっとも、ずっとなわけはなく、刹那の話だけど。

助手席を見ながら思う。

ここにいたのに。

つなぐ先のない左手が寂しい。


このノートに新しい彼女との日々を綴れば、いつか解放される時が来るのだろうか?

なんてことを書いている最中に彼女からラインが来た。

新しいお布団カバーが届いたとか。

そんなささいなことのやりとりで、二人の関係を縮めていくんだ。

襲いかかってくる寂しさや悲しさは防ぎようがないけれど、今は頼られ必要としてくれる人がいる。

すごく必要だと言ってくれる。

彼女は俺が欲しかった言葉をくれる。

だから、守らなきゃ。

いや、守りたい。

そして、絶対に離したくない。

彼女を愛し続けていくんだ。

そう、心に誓う。

誓う。





ほんの2週間前まで、2人はそんなつもりは更々なかったはずだ。

多少の意識はしていただろうが、そういう関係というのは全く想定していなかったはずだ。

そんな二人を結びつけたのは二人に起きた別々の辛い出来事だ。

ある日突然、こちらに背を向けてしょんぼりするキティちゃんのスタンプが送られてきた。それだけ。俺はすぐに察しがついた。

あの件のせいだな...

一緒にパートナーとして組んでいた男性社員が鬱病を理由に突然会社を辞めてしまったのだ。その社員は俺とは縁深い存在。

守りきれなかった...

忸怩たる思いを俺も抱えていたところだった。

彼女の中には色々な思いが巡っていただろう。お店をどう回していこうという不安、なぜ突然という怒り、もっとやりようがあったのではないかという後悔。

彼女自身疲弊しきっていて、そこに彼がヘルプで来たはずなのに、逆に不安定の要因をもたらされてしまったのだ。

落ち込むのも当然だ。

彼女は思いの丈をラインの投稿にあげて、すぐに消したのだが、たまたま俺がそれを見ていたのだ。

続く

俺は電子回路を通じて彼女から送られた引導を甘んじて受けることにした。

今は、それ以外、出来ることは何もなかったからだ。

過去に「お腹にぐさりとな」なんて会話を笑いながらした事はあったが、まさか最期に心にナイフを突き立てられることになるとは思わなかった。

よりによって、心からの愛情を抱いた人から・・・

いや、いつか来ることが分かっていた未来。

息の根を止められた恋心。

でも、そのことに感謝をする時がくるのだろう。

時間がないといいながら、引き伸ばしていたのは自分のほうなのだから。

これ以上あーだのこーだの言って彼女に迷惑をかけたくない。

だから、沈黙を貫くことにした。

俺は、彼女のためと思いながら、結局、やさしさと愛情の押し売りをしていたのかもしれない。で、受け取ってもらえなくなったら・・・

最低だね。

最低なのは俺のほうなのだと。

貫けなかった自分。

あの日以来、落ち込む自分をどうすることもできなかった。

心が真っ二つに裂けた感覚はいつ以来だろう?


幸い体調絶不調で風邪をひいてたため、職場ではそれで元気がないということにして、どうしょうもないテンションで日々をやり過ごしていた。

そんな時だ、先日記事にも上げたが、近隣店舗のアイドル店長からスタンプが送られてきたのは。

彼女とは一緒にご飯を食べに行って以来、何かと連絡を取り合うことが多くなっていたし、店舗が近いこともあり、物の貸し借りでよく行き来する仲になっていた。

そこに送られてきた後ろ向きの落ち込んだ姿のキティちゃんのスタンプ。

それだけ。

それを見た瞬間、かるく衝撃を受けた。

これどんなデジャブ?

いつかもこんなことあったよね。

落ち込んだワンちゃんのスタンプだけが送られたあの日。

その日からだったんだ。

心が傾き始めたのは。

俺は、人として頼られている。

今回、彼女がなぜそんなスタンプを送ってきたのか、俺はその背景にあることを理解していた。

俺も無関係ではなかったわけで。

彼女が無言の助けを求めている、助けなきゃ・・・と、心の準備を始めていた。

一つのけじめがつけられた後で、「今度はいつになるのだろう?」と思っていたのもつかの間、もはや苦笑いを浮かべるしかない展開。

どんな怨念?

俺はそう心の中で呟いていた。