キューピット様 | 怖い話 総本山 ダイスケワールド

キューピット様

中学生のころ 流行ったんだぁ。
要はコックリさんなんだけどね。 
色んな呼び方あるみたいね。
でも、内容はだいたい同じだね。 
紙に あ~ん まで書いて はい と いいえ 書いて 男 女って書いてね。
やり方は書かないよ。
どうしてかって?
それは 俺と同じような体験を君たちにさせたくないからさ・・・
面白半分でこういう事しちゃダメだね。
ホントに・・・

この話は俺が体験した中で一番怖かった話だ。
始めるよ(笑)



中学生位ってさ 面白半分っていうかノリで行動しちゃう事あるじゃない。
 どっから仕入れてきたんだか キューピット様のやり方を聞いてきた奴がいてね。 
 みんな 幽霊なんか信じねー って奴らばっかりなんだけど なんか怖いもんだから俺を呼んだらしいのね。
んで、始めたんだわ キューピット様。
夜中の2時が1番来やすいらしいんだ。
だから土曜の夜に友達の家に泊まりに行って2時になるのを待ったんだ。
俺を含めて四人。
中学生にとっては2時は結構キツイ時間なんだよね。
それでもみんな興味津々だから目をギンギンに光らせて着々と準備を進めてた。
そして午前2時ジャスト。
10円玉に指置いて なんだらかんだらとキューピット様を呼ぶ言葉を唱えたんだ。
 まぁ、来てください的な事を言うんだけどね。

10円玉が スーッと動いて はい の所に止まった。
「キューピット様が来たぞ」

誰もが「誰かが動かしてる」って思ってた。
俺もね(笑)
んで、なんか くだらない質問をいくつかしてたんだ。

 だれだれの好きな人は とか 将来は何になる とか・・・

まぁ 中学生位ってそんなもんだよね(笑)
その都度10円玉はスーッと動き文字の所へ動いた。
「そうだったのかぁ」 「ほんとかよ~」 そんな声が飛び出し和やかなムードになっていたんだ。
あの質問をするまでは・・・


一通り質問を終え、俺達は少し飽きていた。
そんな中 一人がこんな質問をしたんだ。

「キューピット様は男ですか?女ですか?」

すると 10円玉は何の迷いもなく スーッと 男という文字と女という文字の間に止まった。

「なんだ?キューピット様って オカマかぁ(笑)」 誰かが笑う。
すると今度は10円玉は 男 の字と 女 の字を交互に行ったり来たりを繰り返した。

スーッ スーッ スーッ  みんな無言の中10円玉だけが静かに音を立てて動いていた。

「なんだよ、これ、だれが動かしてんだよ。止めろよ。」
たまらず一人が声をあげた。

「俺じゃねーぞ」 「俺でもないぞ」 「俺じゃないよ」 
三人が次々と声をあげ 俺の方を見た。
この視線は 10円玉を動かしているのが俺であってほしい という懇願が込められている気がした。
 俺は みんなの期待を裏切り 真実を述べた。
「残念ながら、俺でもないんだよね。」

それを聞いて この部屋の主であるT君が呟いた。
「ほんとに来てるのか?キューピット様・・・」

みんな うすうす気付いていたんだと思う。
この部屋の空気の重さ・・・ 尋常じゃない。

別の友達が口を開く。
「思ったんだけど、このキューピット様って一人じゃないんじゃないか?」

俺も同じ事を思っていたんだ。
さっきから、質問に対しての答え方が 時には丁寧に 時には 乱暴に と まるで別人のような答え方をしていたんだ。
俺も 複数が来ている事は感じ取っていた。

確かめてみるか・・・
俺は そう思い みんなに提案した。

「どうも このキューピット様は一人じゃないらしい。
  何人居るのか確かめてみるか・・・」

俺の問いかけにみんながうなづいた。

みんなに確認をとり、俺はキューピット様に質問した。
「キューピット様、キューピット様、あなた方は何人で来ているんですか?
人数を知りたいので、右手で壁を叩いてもらえますか?」

俺が質問をすると 今まで はい と いいえ を行ったり来たりしていた10円玉がゆっくりと はい のところに止まった。

その瞬間だった、
部屋中の壁という壁のいたるところから、更には 天井 床 と
部屋を取り囲むすべての場所から

ドンドンドンドンドンドンドンドンドンドン!! 
と物凄い勢いで叩く音が!

「うわぁ~!」 みんなの絶叫が部屋に響く。
だが、その絶叫がかき消される程の壁を叩く音、更には その振動が絶叫を包み込む。

奴らが本当に右手だけで壁を叩いているとしたら この数は 10や20どころの数じゃない・・・
何百単位の数だ。
しかも その振動は明らかに外側からのものだった。
壁、天井、床と余すところ無く外側から部屋に向けて叩いているんだ。
さらに段々と叩く力が強くなってきている。
 天井の蛍光灯が揺れ、本棚から本が落ちてくる。

「うわぁ~!」 「助けて~!」  みんな 涙声になっての絶叫だ。

これだけのパニック状態の中で 誰も10円玉から指を離さない・・・
いや、そうじゃない、指が離れないんだ。
すでに一人が恐怖で気を失い倒れている。
一人はうずくまってガタガタ震えている。
それでも右手だけはテーブルの上にあって 人差し指はしっかりと10円玉の上にあるんだ。
もう、みんな自分の意志とは関係なく10円玉に指が張り付いていた。

唯一 意識をはっきり持っていそうなT君も 顔面蒼白で今にも倒れそうだった。
 もう、俺がどうにかするしかない・・・

「キューピット様キューピット様、あなた達の数はわかりました! もう 叩くのはやめてくださ~い!!」 
俺は 叫びとも悲鳴ともつかない声で絶叫した。

すると、 ドンドンドンドンドン と叩く音の中で ドカーンという大きな音が一回響き すべての音が止まった。

何もなかったような静けさ。 だが、散乱した本や小物が 事の大きさを物語っていた。

「いっ、居なくなったのか?」 T君が恐る恐る俺に聞いてきた。

「いや、まだ居るよ。」 俺は答えた。

平然と答える俺に 少し苛立つようにT君が言う。
「なんでわかるんだよ。もう、音しないじゃん」

俺は倒れている二人を気にしながらT君に言った。
「指、まだ離れないだろ?」

フッと我に返ったT君は まだ人差し指が10円玉の上にあることにようやく気付いたようだ。

「どうするよ。」 泣きそうな声でT君が俺に問いかける。

「帰ってもらうように頼むしかないだろ・・・」
俺も これしか言いようがなかった。


ここからは持久戦だった。
なんせ帰らないんだ。
「キューピット様、キューピット様、今日はありがとうございました。もう、帰ってください。」
何度この問いかけをしたことか・・・

何度頼んでも10円玉は いいえの所にいってしまう。
しかも 倒れている二人の手を引きずってだ・・・
すごい力だよね。
それでも根気よく俺は問いかけた。

二、三時間は繰り返してたと思うよ。

「帰って下さい」 いいえ
「帰って下さい」 いいえ
の繰り返し‥‥
それでも根気よくひたすら同じ問いかけを繰り返す。

そして ようやく 10円玉は はい の所に‥‥

フッと全身の力が抜け 人差し指が10円玉から離れた。

俺とT君は顔を見合わせ大きくため息をつくと無言で大の字になった。
とにかく疲れた。


気付くとT君のお母さんの声が聞こえる‥‥
「みんな、もう起きなさ~い。いつまで寝てんの~。朝ご飯出来たわよ~」

みんな無言だった‥
昨日の事は夢だったと、みんな思いたかったんだろう。

朝になって考えてみると どこまで現実でどこまで夢だったのかハッキリしない‥

「飯、食うか‥」 T君がつぶやくと みんな無言でうなずいて部屋を出ていった。

途中で寝ちゃったのかなぁ‥最後の方は夢?
最後に部屋に残った俺はそんな事を考えながら部屋を出ようとした。

部屋の入口に立ち部屋を見渡す。

夢なんかじゃない! この散乱した本や小物、そしてなによりの証拠が 最後のドーンという音が残した壁のひび割れ‥‥


「終わったんだ、終わったんだ‥」
俺は自分に言い聞かせるようにつぶやき部屋を出た‥‥



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