SPCを使うにせよ、自社で投資するにせよ、不動産投資で気を付けなければいけないことがあります。
皆さん、「利益」=「得られるお金」と思っていたりしませんか?
現金商売ならそういうこともあるかもしれませんが、こと不動産投資においては、こういう認識だと危険です。
昔ながらの言葉に「勘定合って銭足らず」なんていう言い方がありますが、要は利益が出ていても資金が枯渇してしまうということがあるわけです。
なぜ、利益とお金が一致しないのか?
それには会計のからくりがあります(というほど大げさではないですが)。
会計では、発生主義という考え方が取り入れられており、お金が入ってくるかどうかではなく、収益が発生したかどうかで測定されます。
具体的に言うと、契約上賃料を得られる権利があるのであれば、入居者が滞納していても収益として認識するというものです。
逆に、不動産に関する会計処理に特徴的なものとして、減価償却というものがあります。
これは、投資した不動産について、耐用年数(使えなくなるまでかかる年数)にわたって費用処理を行うというものです。
費用には計上するのですが、実際のキャッシュアウトは伴いません。
また、不動産投資で大きな影響を及ぼすものとして、借入金の返済があります。
借入金の返済は多額のお金が出ていきますが、これは費用にはなりません。
つまり、税金計算する上では、収入から引けるものではないということになります。
これらを、1000万円の賃料収入、300万円の減価償却、500万円の借入金返済、税率40%という例を使って計算してみましょう。
利益は1000万円-300万円=700万円です。
その利益には税金が280万円(700万円×40%)かかります。
利益から税金を引くと、700万円-280万円=420万円となります。
ここから500万円の借入を返済することになります。
すると、420万円-500万円=△80万円となって、収支はマイナスとなってしまいました。
さて、この計算は合っているのでしょうか?
皆さんはどこがおかしいかお分かりでしょうか?
そう、実は利益は出ていて、お金も不足していません。
借入金は費用ではないので、会計上の収支はあくまでも税引後の420万円です。
なので、不動産に投資して420万円の利益が出たということになります。
では、資金はというと、減価償却費300万円は費用ではあるもののキャッシュアウトを伴いません。
つまり、資金の動きだけを追うと、賃料収入1000万円-税金280万円-借入金返済500万円=220万円ということになり、不動産に投資して実際に220万円というお金を手にしたことになります。
利益420万円、手残り220万円ですね。
例として挙げた内容では利益も出て資金も得られることになりましたが、よくあるのは賃料収入で利益が出ているものの、税金を引いたら借入金を返せるほどのお金が残らないという問題です。
これが、冒頭で説明した「勘定合って銭足らず」の正体です。
不動産に投資するにあたっては、損益を計算するだけでなく、必ず資金収支、いわゆる実際の資金繰りを見ていかないといけないということがお分かりいただけたでしょうか。
不動産投資では常識的な内容ですが、利回りや賃料収入ばかりに目がいってしまうと、思わぬ落とし穴にはまってしまいますので、注意してくださいね。
~~~~~~~~~~~~~~~~~
本ブログでは、SPCに関する予備知識のない方でもスラスラ読んでいただけるような文章を意識して書いています。
結果として、法律上の詳細な説明を割愛したり、表現が多少雑になったりすることがありますが、実際の投資にあたっては、専門家の助言を得て実施するようにしてください。