MENTAL HEALTH12 (門番の苦悩) | ◎時空の螺旋◎ spatio-temporal-*HELIX*

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この世界の美しさ
自然の摂理の巧妙さ
命の営みの不思議さ

センス・オブ・ワンダーをアートで表現します。

MENTAL HEALTHシリーズは趣味でたまに書く小説のようなものです。
 
過去のお話はこちらから
最近の7~11話はリンクしておきます。
 
 
フィクションのほうが心に染み込みやすいなーという気付きがあり続けております。
では、12話目をどうぞ。
 
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此処へ来てもう4年になる。

 
毎年変わるメンバーに個性はある。
 
昨年は元気で活発だった。
今年はおとなしいが優秀だ。
 
僕は彼らを教え導き共に過ごし送り出す。
 
立派に成長した彼らを誇り
未来を思い描き
去りゆくその背中を見つめるのだ。
 
僕は1人、ここに留まる。
 
僕はまるで門番だ。
 
新しい世界へ踏み込む者を受け入れて
新しい世界へ踏み出す者を送るのだ。
 
彼らの成長を眩しく感じながら。
変わり映えのしない自分にため息をつきながら。
 
やるせない気持ちになると、あの山へゆく。
特別な、特別なあの場所へ
息を切らしてたどり着く。
 
 
なぜわざわざしんどい思いをするの、
と恋人は問う。
 
山を登ることは成長に似ているからかもしれない。
 
眩しい世界へ踏み出す彼らに
少し近づける気がするからかもしれない。
 
 
「またお会いしましたね」
 
山頂で男性に声をかけられた。
以前にも会ったこの男性は、
この山がいかに神秘的で素晴らしいかを、やってくる人々に話して回る。
 
彼もまた、門番だ。
 
人々は、山に癒やされ己の人生を進みゆく。
彼はいつもここにいて、同じ話を繰り返す。
自らは成長することなく、
進みゆく人々の背中を見つめて送るのだ。
 
 
「あなたはやるせない気持ちにはならないのですか」
 
出かかった言葉を飲み込んだ。
 
これは、彼の選んだ道だ。
僕は、僕の使命をまっとうする。
 
また、1年が始まる。
同じようでも昨年と今年は違う。
昨年の僕と今年の僕も少しは違っているだろう。
僕の決意を恋人に伝えよう。
ゆるやかな、僕なりの成長を。
 
 
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教師をモデルに書いたお話です。
子供の成長とこれから何者にでもなれる未来を思うと
眩しくて、羨ましくもなりますが
「これから何者にでもなれる未来」
は年齢関係なく誰にでも平等にあるのだと
教えてくれる素敵な年配の方々も増えてきました。
 
その姿が私たちの希望となる。
ありがとう、と伝えたい。
 
そして自らも成長し続け、
誰かの希望となる大人でありたいです。